地対空ミサイル「パトリオット」は崖っぷちウクライナ軍の"命綱"となるのか?
ネットに出ている情報ではパトリオットの最長射程は160km。「空飛ぶ滑空T34戦車」と呼ばれる1.5t滑空誘導爆弾を投下するSu34を落とせるのか。空自那覇基地302飛行隊隊長を務めた元空将補の杉山政樹氏に聞いた。 「パトリオット一基を追加供与すると報道にあります。これが、発射機一個ならば拠点防衛にはならない。しかし、一基が一個ユニット。レーダー、発射機数台、指揮統制車などの10数台の車両からなる部隊だとすれば、拠点防衛ができるかもしれません。 高度2万フィートを飛ぶ戦闘機を射程距離100~160kmで落とすことは可能です。しかし、空域を封鎖することは難しい。ただし一方で、Su34を飛ばせないようにする苦肉の策は取れます。 まず、露空軍のSu34のパイロットはほとんど無防備の中で撃っている。そして、パトリオットのほうが射程距離は長い。なので、ロシア領空でSu34が1、2機やられれば、露空軍パイロットは飛ばなくなります。『死んで来い』という特攻任務は空軍パイロットにはあり得ないですからね」 そうなると、最前線はどうなるのだろう? 「すると、露軍は前出の戦法が大きく制約を受けることになります」(二見氏) どう変化する? 「ウ軍は、塹壕やコンクリートで固めた防御陣地が崩されないので、陣地を使い効果的に防御戦闘ができます」(二見氏) つまり、防御線で簡単に穴が開かなくなるということだ。その場合、ハルキウ戦線でウ軍はどう戦えばいいのだ? その作戦を二見元陸将補に立案していただいた。 「砲を一列に並べ、時間をかけて大量の弾量を指向する砲撃を行なうと、露軍のドローン、対大砲レーダーによって撃った瞬間に座標位置がバレます。そして、ただちに撃ち返しを受けて、大量の損害を出してしまうため、砲兵の運用は変化しています」 では、どうすればいい? 「105mm榴弾砲は、速射で1分間に16発撃てます。これを30秒で8発撃ち、陣地転換します。砲を車両に繋いで移動するまで1分半。計2分で撃って移動です。 次に120mm迫撃砲は毎分12発速射できるので、これも30秒で6発撃ち、1分で3個に分解して移動を開始します。それから81mm迫撃砲は1分間に最大20発速射、30秒では10発となります。陣地移動は120mmよりさらに速く、砲分解に10秒、移動まで20秒、計30秒です。 そして、155mm榴弾砲は装輪装甲車搭載の自走砲を使います。射撃最大速度はタイプによりますが、1分間に4~8発、30秒で2~4発。自走砲なので撃ったらすぐに移動します。GPSなどの位置情報を利用し、統合火力調整所JFSCCからの一括管理で素早い展開と砲撃位置への移動命令を行ない、到着したら30秒速射、すぐに位置移動します。この砲撃方法ならば露軍大砲レーダーに探知されず、各距離にいる各種露軍を殲滅できます」(二見氏)