プラ条約、なぜ必要? 生産・消費伸び、海洋へ流出
プラスチックによる汚染を規制する条約作りに向け、各国の代表者が集まる政府間交渉委員会が韓国・釜山で開幕した。プラ製品の生産と消費が伸び、適切に処分されないごみが海洋など環境中に流出する問題が深刻化する中、対策を話し合う。世界全体で取り組む枠組みをつくれるかが問われる。 ―プラは世界でどれくらい使われているか。 経済協力開発機構(OECD)によると、2019年の世界のプラ生産量は4億6000万トン。1950年からの約70年間で230倍と大幅に増加した。廃棄量は3億5300万トンに上るが、リサイクル率はわずか9%。22%が流出したり、管理されていないごみ捨て場で処分されたりしている。プラは自然界で分解されないため、たとえ小さくなっても海中や土壌に長期間蓄積される。 ―何が問題か。 ウミガメなどの海洋生物が、流出したプラを誤って食べるといった被害が発生している。ヒトについても、劣化で小さくなったプラが食品や大気を通じて体内に取り込まれ、健康影響が生じることが懸念される。現時点で因果関係は明らかでないものの、微細なプラや添加された化学物質により、生殖系や免疫系の異常を引き起こす可能性があるとの指摘も出ている。 ―条約制定の背景は。 海洋プラ問題は、15年にドイツで開催された先進7カ国(G7)サミットの首脳宣言で世界的課題として提起された。また、新たな対策が講じられない場合、50年までに海洋中のプラが魚の重量を上回るとの試算も公表され、国際社会で対策への機運が高まった。 ―なぜ条約が必要か。 これまでも国連や各国政府はプラ削減を呼び掛けてきたが、生産量と廃棄量が伸び続ける中、対策は追い付いていない。世界共通の枠組みで汚染を終わらせるため、法的拘束力を持つ条約の策定が22年の国連環境総会で決議された。 ―条約の締結で何が変わるか。 交渉委の議長が示した条文のたたき台では、各国が国別計画を策定し、取り組みの実施状況を報告・評価する仕組みが盛り込まれた。気候変動対策の国際枠組み「パリ協定」と同様で、対策の確実な実施が期待される。一方、プラ生産に規制をかけるべきだといった主張もあり、暮らしや経済に影響が及ぶことも考えられる。