あの戦争、あの紛争はバイデン時代に始まった…橋下徹「なぜ西側リーダーは"トランプ大統領"でなければならないか」
■僕も驚くトランプ氏の批判に耐え抜く凄い力 威勢のいい政治家や言論人は「外国の侵略から領土・領海を守れ!」「国際法秩序を守れ!」と叫びます。それはもちろん正論ですが、では誰のために、何のためにそれらを守るのか。それは抽象的な想像上の国家という概念を守るためではなく、そこに生きる国民を守るためじゃないですか。ウクライナも例外ではありません。ウクライナの一般市民を守ること、その守り方を一番に考えるべきなのです。 ウクライナの一般市民を守るためには、ロシア軍を武力で駆逐するだけでなく、ヨーロッパの安全保障の枠組み=多国間でウクライナを守る方法もありますし、そちらのほうが強力です。そしてこれは唯一政治的な妥結で実現できるものです。 この政治的な妥結こそが、戦争を終わらせるベターな方法です。 僕は決してプーチン大統領のやっていることが正しいと言っているわけではありません。ただ実存を伴わない理想や正義によって国民生活が破壊されたり、国民の命が奪われたりするなら本末転倒ではないかと言っているのです。時には高邁な理想を脇に置き、相手を交渉のテーブルに着かせる譲歩も必要です。 当然、西側諸国の理想家やイケイケ派からは大バッシングを受けるでしょう。でも、その批判に耐え抜く力も含めて「有事のリーダー」なのです。 その点、トランプ氏の「批判に耐え抜く力」は尋常なものではありません。あれだけの罵詈雑言や人格攻撃にさらされたら普通の政治家なら参ってしまいますが、トランプ氏は平気な顔をしていますから(笑)。 ところで、「有事のリーダー」としては、宥和政策をとってナチスドイツの台頭を許したイギリスのチェンバレン首相に対し、徹底的に戦った後任のチャーチル首相を理想のリーダーと称揚する声がありますね。でも、それだって国を取り巻くその時代の条件次第で変わります。 強硬策をとれるだけの条件が整わないうちは、チェンバレン式に引き延ばしで時間稼ぎをするのが正解です。一方、アメリカの参戦により戦力の充実が見込めるようになったら、チャーチルのように「われわれは絶対に降伏しない」と大演説を打てるのです。 今のウクライナの状況を見れば、強硬策を打てる条件が整っているとは思えません。国民が味わっている今の苦難を考えれば、ゼレンスキー氏はチャーチル的な態度振る舞い一辺倒ではなく、チェンバレン的なものも取り入れるべきではないかと思うのです。 ---------- 橋下 徹(はしもと・とおる) 元大阪市長・元大阪府知事 1969年生まれ。大阪府立北野高校、早稲田大学政治経済学部卒業。弁護士。2008年から大阪府知事、大阪市長として府市政の改革に尽力。15年12月、政界引退。北野高校時代はラグビー部に所属し、3年生のとき全国大会(花園)に出場。『実行力』『異端のすすめ』『交渉力』『大阪都構想&万博の表とウラ全部話そう』など著書多数。最新の著作は『政権変容論』(講談社)。 ----------
元大阪市長・元大阪府知事 橋下 徹 構成=三浦愛美