あの戦争、あの紛争はバイデン時代に始まった…橋下徹「なぜ西側リーダーは"トランプ大統領"でなければならないか」
■大事なのは理念ではなく一般国民の生命や生活だ では、なぜ先進国の知識人や既成政治家はトランプ氏を忌み嫌うのか。それは彼がいわゆる「西欧先進諸国的なお上品さ」からは逸脱しているからです。しかし、いまの国際社会の状況はどうでしょうか。 法による秩序、公正な選挙、個人の自由な発言、人権が守られる社会――。もちろん僕もそうした社会で生きていきたいと願いますが、現実の世界を見渡せば、国際社会の中でそんな理想の社会を実現している民主主義国家は少数派です。そして国連総会を見ればわかる通り、国際社会とは政治体制がどうであるかにかかわらず各国が対等な立場で向き合う場です。たとえば民主主義国が非民主主義国に対して、「民主化されていないから相手にしない」ということはできないのです。 もちろん内戦などであまりにひどい人権侵害が起きた場合は国際社会が介入するべきですが、「自分たちの政治信条を受け入れろ」と無理強いするなら、最後は戦争で解決するしかなくなります。近年ではアメリカが民主化の名の下にイラク戦争やアフガニスタン戦争を戦いましたが、結局は成功したとはいえない状況で終わりました。 僕も民主主義や自由主義、人権尊重の理念が世界中に行き渡るのはいいことだと思います。でも、そうした理念のために国民生活が破壊されたり、戦争が続き犠牲者が増えたりするのがいいことだとは思えません。大事なのは理念ではなく、あくまでも「人間の実存」だと考えるからです。象徴的なのが、始まってから間もなく3年になるロシアによるウクライナ侵攻です。 ロシアによるウクライナ侵攻は、普通に考えれば国際法に反する侵略行為です。非はロシアにある。だからウクライナのゼレンスキー大統領は、自国の領土を守り抜くと宣言し戦っています。アメリカなど欧米諸国もそれに応えて、大量の武器弾薬を供給し支援を続けています。日本の政治家たちも「ウクライナとともに!」と威勢がいい。 でも、実際にロシア軍と戦っているのはウクライナ兵であり、ゼレンスキー氏でも彼が頼りとするNATO軍でもないし、ましてや外国の政治家や知識人ではありません。そして欧米からの大規模な支援があろうと、軍事大国のロシアを打ち負かすのは容易なことではありません。「侵略戦争を許すな」といった言葉だけの正義を貫くために、多くのウクライナ兵や一般市民が犠牲になっているのが現実です。