マスク氏、インド訪問延期後に訪中-中国のシグナル発信には好都合
(ブルームバーグ): 電気自動車(EV)メーカー、米テスラのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)には即効薬が必要だった。約1週間前にインドのモディ首相と会うのを取りやめることを決めたマスク氏が28日、予告なしに中国を訪問した。
マスク氏は北京で李強首相ら中国政府の要人と会談。突然の訪中が実を結び、テスラはより高度な運転支援機能を中国で展開する暫定的な承認を確保した。同社にとって米国に次ぐ2番目に重要な市場である中国で売上高を押し上げる可能性がある。
テスラはここ1年半ほど、中国での利益を完全に帳消しにしかねない水準まで値下げを繰り返していた。テスラの株価は29日の米株式市場で15%高となった。
このタイミングは中国にとっても好都合だった。規制強化やデフレ危機にもかかわらず、中国経済は引き続きビジネスにオープンだと政府は外国人投資家を説得しようとしている。マスク氏は約1週間前、テスラでの非常に重要な責務に対処する必要があるとして、予定していたインド訪問を延期したばかりだ。
香港中文大学深圳校国際事務研究院(IIA)の規制・グローバルガバナンスセンターを率いるユー・チュアンマン氏はマスク氏の訪中について、「中央と地方の政府が外国からの投資に対してよりオープンになりたいと考えている大きな構図の一環だ」と指摘。
米国では中国の字節跳動(バイトダンス)に動画共有アプリ「TikTok(ティックトック)」の米事業売却を義務付ける法律が成立したばかりだが、中国は米国を代表するような企業を歓迎しているというアピールにもなる。
ユー氏は「中国政府側が海外投資家を受け入れたり、歓迎したりしているが、米国ではその逆だと、いかに米中が異なるかという中国が発するシグナルと考えられる」と語った。
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原題:Musk’s Trip to Beijing After India Snub Shows Power of China (抜粋)