日本のウクライナ支援とその課題とは―印象論を越えて
忘れないこと、知ること
日本の支援はこのほか、エネルギーインフラを破壊されたウクライナ各都市に対する越冬支援(無償資金協力や発電機、ソーラー・ランタン等の提供)や保健・医療体制整備支援、深刻な傷を負った兵士に対するリハビリ支援などがあり、ウクライナから高く評価されている。 今後の日本のウクライナ支援を考える際に重要なこととは何だろうか。筆者はこれを、「忘れないこと」、そして「正確に知ること」ではないかと考える。 第一に、侵略開始後2年半がたった今だからこそ、ウクライナが今なお侵略の悲惨な被害を受け続けていることそのものを「忘れないこと」が肝要である。現在でもウクライナでは子ども病院などの民間施設がミサイル攻撃を受けるなどし、犠牲者が日々増え続けている。その事実を日常的に直視し、ウクライナの人々の声に耳を傾け続けることは、支援継続の必要性を再確認する上で欠かせない。 第二に、ウクライナの現状や日本の支援の実態を「正確に知ること」が欠かせない。ウクライナ支援への批判として「日本国内に必要な資金が回らない」という趣旨のものが後を絶たない。しかしその額は日本のGDP比0.2%で留まっている。このあたりは、日本の実際の経済力に照らしたバランス感覚のある議論が求められる。 また、「ウクライナは汚職国家であり、いかなる支援も無意味である」との声もある。同国に根強い汚職問題があることは事実だが、支援の継続に疑義を呈する以前に、同国における汚職やその他の社会問題の現状を、まずは「正確に」把握することが欠かせない。 この点においては、日本は他のG7諸国と共に、2015年以降「G7大使ウクライナ・サポート・グループ」において活動を行ってきた(※8)。この枠組みでは、汚職の状況を丁寧に調査した上で改善点をアドバイスし、改革のための必要な支援を提供している。こうした取り組みと、EUによるウクライナ加盟支援とも相乗効果を持ち、ウクライナは戦禍にありながら汚職への取り組みを強化し続けている。 それでも、かつてのイメージでウクライナという国を決めつける言説が日本において後を絶たないのは残念と言うほかはない。現状についてアップデートされた知識が共有されて初めて、支援の必要性に関する地に足のついた議論が可能なのではないか。 本稿で述べてきたとおり、これまでのウクライナ支援は日本の得意分野を活かして実施されてきており、ウクライナ側からも高く評価されている。この着実な実施と継続は日本外交の信頼性の向上に着実に貢献してきたともいえよう。