「消費税10%」予定通り引き上げるべきか? 高橋洋一氏×小黒一正氏
消費税を10%へ――。現状8%の消費税は、2015年10月に引き上げることが「予定」されています。「予定」というのは、予定通り行うかどうかは安倍晋三首相が年末に判断するとされているからです。12年8月に成立した社会保障と税の一体改革関連法では、15年10月1日に消費税率を6.3%から 7.8%に引き上げる(地方消費税 2.2%と合わせて10%)としています。 「地方創生」論議で注目、増田レポート「地方が消滅する」は本当か? ただし、同法の付則第18条に「消費税率の引上げに係る改正規定のそれぞれの施行前に、経済状況の好転について、名目及び実質の経済成長率、物価動向等、種々の経済指標を確認し、前項の措置を踏まえつつ、経済状況等を総合的に勘案した上で、その施行の停止を含め所要の措置を講ずる」と書かれているため、「所要の措置」が必要か安部首相が判断するということになっているのです。 アベノミクスによって景気好調気分が広がった昨年と打って変わり、消費税が8%に上がった今年の経済指標は芳しくありません。消費税増税が景気を冷え込ませたという意見もある一方で、増税の影響は軽微で、円安と原発停止によるエネルギー価格の上昇、天候不順、単なる消費税の反動減があるだけ、という意見もあります。 消費者すべての懐にダイレクトにつながる消費税引き上げは法律通り進めて行くべきなのでしょうか。元財務省の高橋洋一嘉悦大学教授と小黒一正法政大学准教授のお二人に聞きました。
消費税「8%」の景気への影響は?
財務省出身の高橋洋一嘉悦大学教授は、すでに4月の消費税増税が日本経済に大きなダメージを与えていると言います。 「今年4月の3%増税の影響は過去に消費税増税とくらべても悪い結果が出ています。1989年、1997年の7月には消費はほとんど戻っていましたが、今回は▲5.7%で戻ってきていません。また、89年の4~7月の平均は▲0.6%で、97年は▲1.2%であり、今回は▲5.2%で、それらと比べてもダントツに悪い結果がでています」 アベノミクスによる株価の上昇は記憶に新しいですが、3%増税以降、景気の低迷が続いているというのです。 一方、小黒一正法政大学准教授は、増税による反動減は過度に大きくはないといいます。 「消費税増税における反動減の大きさは、経済成長の実力である『トレンド成長率』から“実質GDP成長率”がどの程度乖離しているかで評価する必要があります。80年代のトレンド成長率(四半期)は1.1%(年率4.3%)、90年代が0.38%(同1.5%)、2000年代が0.35%(同1.4%)でした。他方、4-6月期の実質GDP成長率(四半期)は今回が速報値で▲1.8%、97年が▲0.9%、89年が▲1.3%でしたから、今回の消費税増税に伴う反動減(▲2.15%)は97年(▲1.3%)より大きいものの、89年(▲2.4)より若干小さいと評価できます。また、そもそも経済指標は、速報値と確定値が違うことが当たり前で、確定値が出るまでは過程の上での数字で議論することになりますし、7-9月期の成長率が公表されない限りは断言できないですが、現状ではある意味雰囲気で議論している側面もありますね」 消費税が経済に与えた影響の評価さえも、専門家であり、ともに財務省の官僚だった二人の意見に違いがあるのが消費税という問題なのかもしれません。専門家の意見が割れる議論を庶民が判断するには、もう少し丁寧な議論が必要なのかもしれません。