「消費税10%」予定通り引き上げるべきか? 高橋洋一氏×小黒一正氏
引き上げのタイミングは「今」なのか?
増税による景気悪化は影響が大なり小なりあるということは事実といえます。小黒准教授はそれでも、10%への引き上げは今のタイミングでやるべきだと言います。 「確かにいまは景気回復が弱まってきているので、延期できるなら延期してもいいと思います。しかしもし先延ばししたら、次に本当にあげられるのかわかりません。選挙もありますから。70~74歳の医療費自己負担など、過去でもほとんど決まったものが政治の要請で延期や停止となり、時期を見てという約束がいくつも反故にされてきた。いまできることをしないと、次の機会はないと思わないといけないと思います」 政治家の影響力を重視する小黒准教授に比べ、高橋教授は財務省の力を挙げます。 「増税は財務官僚の歳出権を増大させます。多くの政治家は消費増税に賛成であるが、それは増税による予算のおこぼれにありつけるからです。経済界も増税に賛成する人が多いが、それは法人税減税をバーターとして財務省が差し出すから。学者、エコノミストが消費増税を賛成するのは、財務省に逆らわない方が、親元の金融機関が外為資金の運用をできるなど商売上有利になるから。そしてマスコミが消費増税を推奨するのは、リークネタをもらいたいほかに、新聞の軽減税率を財務省からもらいたいためです。つまり誰もが財務省のおこぼれをあずかりたいのです。そのベースになっているのが財務省のもつ裁量権となるわけです」 しかしやはり景気の悪化は避けたいところです。まず景気回復が先という高橋教授は「消費増税をなしとする政策」が必要だと主張します。 「今となっては最善の手は、5%への消費減税。それができないときには、全品目5%の軽減税率の適用。それもダメなら、97年増税時には先行所得減税だったが、今回は事後所得税減税。それもできないなら、これまで増税した分をすべてはき出すような減税と財政支出です」 消費税がいまの生活、そして将来の生活と国のカタチにどう影響をあたえるのか。さまざまな角度での議論はまだまだ必要と言えそうです。 (ライター・島田健弘)