仙台戦の劇的逆転勝利に貢献した川崎の飯田遼「良い時も悪い時もやるべきことを徹底してやる」しなやかなマインドのルーツ
下剋上V、二軍から主将「努力をやめたらそこまで」
現在中地区最下位の川崎は苦しい戦いを強いられている。年末にはBリーグ創設以来初となる10連敗も経験した。特に昨シーズン以前からチームに所属する選手たちは、それまでとの大きなギャップを感じることもままあるだろう。 ただ筆者は、在籍2シーズン目の飯田はこのような状況であっても、これまでのキャリア――拓殖大でBチームからAチームのキャプテンに上り詰めたこと、香川ファイブアローズ時代にB3降格を経験したこと、B2からB1へとステップアップを果たしたことなど――を基に、上手に気持ちをコントロールできるているのではないかという仮説を持っていた。そのようにぶつけてみると、飯田は話し始めた。 「高校では県で圧倒的に強い東海大三(現在の東海大諏訪)以外のチームでウインターカップを狙いたいと思って佐久長聖に進学し、3年でそれを達成しました。大学でもコツコツやっていた結果Aチームに上がれて、キャプテンになって、インカレ3位という結果を出せました。チームの状況が良い時も悪い時も、自分がやるべきことを徹底してやること。『負けちゃったし、今日全然試合出てないし、もう明日やればいいや』とは考えず、少しずつ、あせらず、今やるべきことが何か考えてやることが何よりも大事なことだなと思っています。去年ベンチ外になった時期もそうでしたし、チームが今こういう状況であることももちろん悔しいです。でもそこで努力をやめたらそこまでの選手。一生懸命ひたむきにやることはすごく大事にしています」 そういったマインドで「今やるべきこと」として取り組んでいることとして、飯田はチームディフェンスをより深化させるコミュニケーションを挙げた。 「結局1人じゃ何もできないじゃないですか。なので試合をより鮮明にイメージして、『コーチが言ってること以外にもこうしたほうがいいよね』というコミュニケーションを促していますし、もっともっとできると思っています。相手の特徴を練習の中で深く突き詰めて、本気でイメージしてやらないと練習は意図したものになりません。『この選手にこのプレーだけはやらせないようにしよう』『せめて3ポイントじゃなく2ポイントを打たせよう』というような具体的な意識をチーム全体で持てたらいいなと思って自分からそういうことを言うようにしていますし、最近は年齢関係なくいろんな選手からも挙がるようになってきました」 ちなみにこの試合、飯田が「キャリアで初めてです」と振り返るプレーがあった。第4クォーター中盤、キッドの速攻を止めようとして犯したアンスポーツマンライクファウルだ。飯田は「あれは間違いなく反省すべき点。ファールは冷静にしなければいけないものですし、普通にボールに守りに行けばアンスポにはならなかったので」と悔いたが、「でも」と言葉を続けた。 「なんて言うんですかね。OKではないですけど、気持ちが出ているプレーではあったというか。仙台さんも勝ちたい。僕らも勝ちたい。そういう戦いの中で(流れが変わりそうな)あそこで『意地でも止めてやる』ってプレーが出た。それが今年のチームはできていないことが多かったので。アンスポになったことは反省していますが、ファウルをするという選択自体は間違ってなかったのかなと思います」 飯田は大変に気立ての良い青年で、時としてプロアスリートに必要とされる狡猾さや、したたかさ、なりふり構わぬハングリーさといったものをあまり感じさせない。そんな飯田が珍しく発露した強い気持ちに、彼、そしてチームがどれだけ勝ち星に飢えているかを思い知った。
青木美帆