「茶色い宝石®」で未病改善! 健康維持から難病治療までアプローチする腸内細菌の新たな可能性とは
チャプター3:難病治療の新アプローチ! 腸内細菌移植でがんや潰瘍性大腸炎への効果
福田さん:そのほかに、医療への応用もあります。知事は「潰瘍性大腸炎」をご存知ですか? 黒岩知事:安倍元総理が苦しまれていた病気ですね。 福田さん:はい。潰瘍性大腸炎は難病指定されていて、患者数も20万人以上と難病の中で患者数が一番多い疾患なのですが、実は健康な人の腸内細菌を活用することによって、症状を改善する可能性が臨床研究で示されました。 福田さん:私たちのグループ会社のメタジェンセラピューティクス社では、この治療方法を厚生労働省に先進医療として申請しています。まず、潰瘍性大腸炎の患者さんに3剤混合の抗菌剤を2週間飲んでいただき、患者さんの腸内細菌を一度全て排除してから、健康な人の腸内細菌を大腸内視鏡を使って移植するという治療方法です。 黒岩知事:腸内細菌の移植は、それほど大きな手術ではないのですか? 福田さん:メスは使いません。いわゆる大腸カメラと同じでお尻から内視鏡を挿入して、そのときに健康な人の便の懸濁液(けんだくえき)を腸内に入れます。 黒岩知事:「今やりたい」という人がいたらできるのですか? 福田さん:今は先進医療として実施人数も決まっているのでできませんが、今回の成果を評価して有効性が認められたら誰でもできるようになります。将来的には保険適用での提供を目指しています。 黒岩知事:こうした研究は、世界中で進んでいるのですか? 福田さん:様々な臨床研究が進んでいます。もう1つご紹介したいのが、がんの領域で腸内細菌を活用できる可能性についてです。がんの治療で注目されている「免疫チェックポイント阻害薬」という薬の効き目が、腸内細菌のパターンに依存するということがわかってきました。 黒岩知事:よく効く人と、そうでもない人がいるということですか? 福田さん:はい。そのため、免疫チェックポイント阻害薬の治療効果がなかった患者さんに、治療効果があった人の腸内細菌を移植してもう1回治療すると、3割ほど効くようになることが報告されています。 福田さん:さらに最新の研究では、メラノーマというがんの患者さんに、あらかじめ健康な人の腸内細菌を移植しておくと、治療効果を得られる人の割合が通常20~30%なのが65%に上がるといった研究成果も報告されています。 黒岩知事:画期的な研究ですね。「効く薬を開発しなきゃいけない」というこれまでの考え方と違い、「その薬を効くように腸内細菌を変えていく」わけですね。 福田さん:おっしゃるとおりです。