考察『光る君へ』35話「お慕いしております!」中宮・彰子(見上愛)の心を動かした『源氏物語』「若紫」。一条帝(塩野瑛久)は道長(柄本佑)に「夜に藤壺にゆく」
伊周も来ていた
道長たちが挑んでいる、こちらが思ってたんと違う御嶽詣。ロッククライミング !? 思わずファイトォ! いっぱぁあああつ! という往年のテレビCMを思い浮かべるほど厳しいお参り風景だ。……待てよ。まひろの亡き夫の宣孝(佐々木蔵之介)も、13話()で御嶽詣から帰ってきてたよね? 派手な格好でお参りしたんだぞとその姿を披露していた。あのまっ黄色の、動きにくそうな装束でこれやったの……? まひろにお土産を持ち帰ってやろうという心身の余裕もあったの? 改めて宣孝のタフぶりを思い知る。 そしてなんとか金峯山の山上本堂に辿り着いた道長たちは、ここに経文を納める。 「寛弘四年八月十一日」と刻まれ、金が塗られた銅でできた経筒は、江戸時代・元禄の頃の山上本堂改築工事の際に出土した。しかし中に納められた経文は江戸時代以降散逸してしまい、一部は東京の五島美術館に、残りは金峯神社などに保存されていた。それら以外に2023年に新たに9巻が金峯山寺にあることが確認され、国宝に指定されたばかりである。経筒が再現されている画面に、NHKの考証と美術班の力を感じた。 難行の果てに経文を納め、帰路に着く道長を弓矢で狙う一団。指令を出すのは伊周! えっ。伊周? 命じるだけじゃなくて、自分も来ちゃったの。失敗して姿を見られでもしたら今度こそただでは済まないというのに、変なところで律儀な男だ。それだけ道長への恨みが深いということか。 すんでのところで、道長たちを守る隆家(竜星涼)が飛び込んできた。 「お前はなぜ俺の邪魔ばかりするのか」「お前は俺の敵か」と問う兄に、兄上を大切に思うゆえと答える……。 長徳の変の発端となった弓を引いたことを詫びる弟に、 伊周「帰ろう」 まるで遊び疲れた幼子が兄弟に呼びかけるような口調のこの言葉に、零落した中関白家の悲哀と弟への愛を感じて、隆家と共に泣いた。隆家は兄が抱える苦しみを軽くできるのか。伊周の妄執が消える日は来るのか。
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