「現在の X の姿勢は、あまりにも無責任だ」:ある国内ブランド広告担当による怒りの告白
──配信面の管理に問題があった可能性は。
我々は災害報道などニュースコンテンツをブロック対象としていないが、ブランドセーフティやスータビリティは当然ながら常にチェックしている。しかし、そもそも管理によって回避できた問題なのか。 キーワード指定や広告ポストが表示される位置を管理する機能などは存在しているが、本当に有効だったのか疑問を感じている。なにより、キーワード設定や配信管理によって広告を不快な投稿に隣接しないようにできたとして、なぜそのような投稿の存在を容認しているのか?
──社外、ユーザーからの指摘などはあったのか。
現時点でそういった報告はない。過去にも、X上でなんらかのフェイクやヘイト投稿に我々の広告が表示されている、といった指摘はなかった。ただ、これは別にXがブランドセーフだったっということではなく、運が良かっただけだろう。
──国内では海外ほど広告主が深刻な問題だと受け止めていないようにも感じられたが、実際のところはどうだったのだろうか。あなた方の場合は?
あくまでも私個人の感覚だが、ユーザーとして「フォロー中」のタイムラインなどを眺めている分には、現在でもそれほど問題が起きているようには感じられない。ブランドとしても、公式アカウントでポストをしている分には、「Xはブランドセーフではない」と思わないかもしれない。 そうした雰囲気もあって、TwitterからXへと変貌していくなかで、グローバルでは問題を指摘する声が挙がっていたが、日本ではどこか遠い出来事のような感覚や危機感の薄さがあったのは否定できない。 ただ、広告収益分配プログラムが始まると以前と雰囲気が異なるな、とは感じていた。私自身もユーザーとしてアカウントを持っているが、「おすすめ」のタイムラインに延々と陰謀論のような投稿が表示され、その合間によく知られる広告主の広告が表示される、といった事態に遭遇したことがある。あの時点で問題提起すべきだった。
──今回の問題に根本にあるのは、Xで導入されている広告収益分配プログラムが投稿のインプレッション数に依存していることにある。一方で、この構造はデジタル広告のエコシステムそのものの問題だと指摘する声もある。この点については、どう考えているのだろうか。
デジタル広告のエコシステムが問題を孕んでいることは同意するし、改善されるべき点が多数あることも全面的に同意する。ただ、仕組みに問題があることと、その仕組みをどう利用しているかという問題は分けて考えるべきで、今現在X上で起きていることの責任はXが負うべきだ。インプレッション課金が成立しているからといって、インプレッションの獲得手段としてヘイトやフェイクが横行することを容認することを意味しない。 そもそも、ヘイトやフェイクがないセーフティな環境は、ユーザーも求めているもののはずだ。これはXだけでなくFacebookなども当てはまるが、プラットフォーマーはプログラマティックに収益を得られる広告事業にあぐらをかいて広告主もユーザーも舐めきっているとしか思えない。札束やインプレッションの塊としかみなしていないのだろう。