性加害 20年治療続けても「自分には再犯リスクが」 “当事者”が語る日本版DBSに「足りない点」
■自助グループ “伝える側”が助けられることも
──自助グループではどのような支え合いをしていますか。 自助グループの根幹となる活動は、ミーティングです。性依存症の経験やどう自分が変わってきたか、苦しんでいることなどを共有します。自分について言語化することで心理的な問題を整理して、対処していく場になります。 治療プログラムを既に経験した人が、未経験の人に(防止)方法を伝えることもあります。伝える側も、自分が持っていないものは人に渡せないわけで、伝えながら「ここは自分も抜けていた」「最近危ないな」と気づくことがあり、相互支援になっています。自助グループの活動内容を、関係機関や弁護士、医療機関に伝える活動もしています。
■専門家「再犯リスクが一番上がるのは…」
これまで3000人以上の性加害者の治療に関わり、「子どもへの性加害 性的グルーミングとは何か」(幻冬舎新書)などの著書がある、精神保健福祉士・社会福祉士で大船榎本クリニック精神保健福祉部長の斉藤章佳さん(44)に、加害者治療の必要性を聞いた。
性加害を繰り返している人たちの再犯防止は可能です。医療機関では一応病名がつきますが、病気だから仕方ないということではない、ということが重要です。加害行為の責任は彼らにあるからです。 治療には、世界共通の科学的エビデンスに基づいた再発防止のプログラムが存在し、彼ら(加害者)は、それぞれのリスクレベルに応じたプログラムを行います。刑務所でも同じように行っていますが、大きく違うのは、クリニックの場合は治療契約で決められた期間が終了した後も、メンテナンスプログラムとして治療が継続できること。理想は、刑務所の中でプログラムを受け、出所後も受け続けることです。適切な治療機関に繋がることで、これ以上被害者を出さない、しっかりプログラムを受ければ必ずやめ続けることができます。 ──加害者治療について知ってほしいことはなんですか。 一番再犯リスクが上がるタイミングは、出所後すぐや保護観察期間が終了するタイミングです。刑務所でプログラムを受けている人でも、今までの全く引き金のない環境から急に社会へ出るので、一気にハイリスク状況に陥ります。だからこそ、出所後に連続性のある社会内処遇に繋げていくことが重要です。 適切な相談機関があり、その後仕事に就けて、再発防止に取り組みながらよりよく生きるためのルートに乗れるように伴走する専門家や専門機関に繋がっていた方が安心だと思います。適切な刑罰とエビデンスに基づいた治療をセットにすべきという考え方が、さらに広がってほしいと思います。