性加害 20年治療続けても「自分には再犯リスクが」 “当事者”が語る日本版DBSに「足りない点」
■加害経験者がみる日本版DBS 20年の期限を“無期限”に
5月9日、国会で審議入りした「こども性暴力防止法案」。その柱となるのが「日本版DBS」だ。教員や職員に性犯罪歴がないか、学校や保育所などに確認を義務付ける制度だ。痴漢や盗撮などの条例違反も含む性犯罪歴のある人は、服役した場合は刑の執行終了から20年、罰金刑の場合は、刑執行終了から10年、子どもと接する業務につけなくなる。性加害経験者の加藤さんはこの法案について、足りないと思う点があるという。
法制化されるのは、子どもへの性暴力を根絶する意味でとても大きな進展だと思います。ただ、僕自身の経験から二点足りないと思うことがあって、ひとつはどの期間までを対象とするか。僕は(性加害をしなくなって)20年超えてますけど、今でも自分に再加害のリスクがあると思います。 20年経ったから制度の枠から外れてしまうのではなく、期限を設けずに(規制)対象とすべき。性依存症は回復はしていくけど、一生治癒はしない、もう治ったから大丈夫だというのはあり得ないし、危険な考えです。1日1日再加害をしない日々を積み重ねていく。今日も電車内に家族連れがいて、女児がいたので、僕は一緒になるのを避けて別の車両に移るという対処をしています。 もうひとつは規制対象の範囲です。僕は家庭教師や障害児介助ボランティアをした際、加害してしまいました。今回の法案では、どちらの職種も規制の対象外です。僕は見ず知らずの子どもに加害してしまったこともありますから、包括的に子どもへの性暴力を根絶するためには、枠組みをもっときちんと整備する必要があると思います。でも、それを完璧に整えるのは大変なので、とりあえず法律を作るというのが大きい成果になるとは思っています。 ──職業選択の自由に反するとの声もあります 職業の選択の自由の制限があっても構わないと思います。全ての職業に就くことを禁じられるわけではないし、第一に考慮すべきは子どもの人権です。自分が加害したことがあるのに、わざわざまた子どもに近づく職業を選択するのは、認識が甘すぎると思います。認知行動療法でも、子どもと一対一で接することは絶対に避けることが提唱されていました。だから、不用意にそういう機会を許してしまうのは、非常に危険なことだと考えています。