見守るだけでは子どもの"社会復帰"はムリ…「学校に行かない子」「自宅に引きこもる子」が日本中に増えたワケ
子どもが不登校になったら、どうしたらいいか。不登校や引きこもりの支援を39年以上続けている杉浦孝宣さんは「まずは子どもの状況を見極めることが大切だ。親子の会話がなかったり、生活リズムが崩れていたりする場合には、親だけで解決するのは難しい。なるべく早く第三者に介入してもらうことが大切だ」という――。 【図表をみる】ひきこもりの重症度 ※本稿は、高濱正伸、杉浦孝宣『もう悩まない!不登校・ひきこもりの9割は解決できる』(実務教育出版)の一部を再編集したものです。 ■10年以上のひきこもりでも社会復帰は可能 子どもが不登校になってしまうと、親は「誰にも言えない、知られたくない」と問題を一人で抱え込んでしまいがちです。このままひきこもりに発展してしまうのではないかと絶望してしまう人も多いです。 特にお母さんが専業主婦の場合は、ほぼ一日中家に一緒にいることになり、子どもを腫れ物のように扱って、ギリギリの精神状態になっていることが多いのです。 でも、大丈夫です。 いくらでも立ち直る方法はあります。絶望する必要はありません。現に、私は39年間で1万人以上を立ち直らせてきました。 ひきこもりから大学生になったり、公務員になって働いたり、結婚して子どもに恵まれたり、みんなそれぞれに立ち直って立派な社会人になっています。 10年以上ひきこもっていた子が社会復帰できた例もあります。中学2年生から24歳までひきこもっていた女性が、私が指導していた高卒支援会にメールで相談をしてきました。翌日には面談をし、通信制高校、サポート校に入学しました。3年かけて卒業し、短大に進学、卒業後は公務員になり、結婚もしました。こんな例もあるのです。 だから、まずは落ち着いて、お子さんがどんな状態にあるのか、客観的に判断しましょう。
■子どもの状況を把握しよう 不登校は年間30日以上登校できない状態と、文部科学省が定義しています。 一方、ひきこもりは外出しない状態(前稿で説明したとおり)が6カ月以上続いている状態と内閣府が定義しています。 ただ、私は、1カ月でも親とまったくコミュニケーションがとれていない場合は、ひきこもりだと考えています。 そして、ひきこもりの重症度を図表1のように分類しています。 ステージ①のように、学校に行っていなくても、親と一緒にご飯を食べたり、会話がたくさんあって、生活習慣が乱れていない場合は、それほど心配する必要はありません。1カ月以内ならば自然に学校に戻っていく場合も多くあります。 不登校状態が6カ月以上だとひきこもりという内閣府の定義は、ステージ③に該当しますが、私は1カ月でも親子間のコミュニケーションがまったくとれない状態で、自室にこもっている場合はステージ③になると考えています。 親と会話があるかどうか、というのが一番の大きなチェックポイントです。 学校に行かなくても、親と会話ができて、自分の好きな習いごとやフリースクールなどに通えている場合なら、いずれちゃんとやっていけるようになります。 ただ、親との会話がなくて、ひきこもりが進行すると、お風呂に入らなくなり、髪の毛やひげが伸びっぱなしになります。自室のカーテンを昼間でも閉め切っているのも特徴です。こうなるとステージ④です。自然に学校に戻るのは困難です。 ■不登校の初期に絶対やってはいけないこと 不登校になったばかりのころは、たいていの親は無理やり学校に行かせようとします。 そうすると、子どもから暴力を受けるケースが多いです。親に暴力をふるうまでいかなくても、物に当たったり、壁に穴を開けたりします。 それがきっかけとなり、親とコミュニケーションをとろうとしなくなります。自室にひきこもってしまうきっかけにもなります。 ですから、学校に力ずくで行かせようとするのはやめましょう。 首尾よく行かせられたとしても、翌日にはまた行かなくなってしまいます。結局、問題の解決にはなりません。