つんく♂語る【後編】日本の未来は…子どもたちに充実したエンタメ教育を
時代の移り変わりとともに変化してきたのは、楽曲だけではない。アイドルグループの売り方も、握手会などでファンと間近に接する接触型イベントが増えて、いまや主流と言ってもいい状況だ。しかし、そのマイナス面としてファンとの距離感が崩れたことに起因すると思われる、ファンによる暴行事件などのトラブルがニュースを賑わせるようにもなった。モーニング娘。も以前からファンと間近に接するイベントを行ってきたが、最近はマスコミ報道などでこうした手法もそろそろ限界なのでは、という論調も出ている。つんく♂は、こうした現状をどう捉えているのか。
アイドルとファンの事件…有名になることはリスクと背中合わせ
「こういった事件というのは、どんな時代でもゼロじゃない。有名になりたいなら、そうしたリスクを常に背負っていることは承知のうえで臨んでいなければダメだと思います。それは本人が未成年であっても、危険と背中合わせであることを知ってなければいけないと思います。何かあっても保護者も所属事務所も時間を巻き戻すことはできないわけです。まずはそれを承知でいてほしいなって思います(事件、事故の責任を本人のせいだと言ってるのではない)」 ファンが100万人いる歌手も10人しかいない歌手も、事件となる可能性は同じではないだろうか、という。 「48グループが国内外合わせると600名以上もいるそうですけど、モーニング娘。が5人だった時代と比べてリスクが100倍以上となるわけでもないし、危険度が分散して安全になるわけでもない。プロアマ問わず、SNSに個人情報を載せた段階でリスキーなわけです。プロダクションやライブの運営サイドやイベント会社等がタレントを守るというのは基本的な職務ではありますが、本当に100%の安全を死守したいというならば、だったら舞台に上げないという極論に達するわけです。それはそれで本末転倒ですよね。僕が今、アメリカに住んで学んだのは『すべてのリスクはあなたが負うべきですよ』ということ。結局、事故や怪我をして損するのは自分であるということを知っていなければならない。結果に対して、誰かのせい、時代のせいにするのはたやすいけど、事故の後じゃもう遅いもんなって」 ここでつんく♂は、過去の具体例としてジョン・レノンらのケースをあげた。 「その昔、ジョンもファンに撃たれ亡くなりました。美空ひばりさんも松田聖子さんも、もっとも安全であるべきステージ上で襲われています。こんな僕ですら、ツアー先で誰もが知ってる有名な高級ホテルに戻ってきたら、真っ暗な部屋の中に『待ってました』と人が侵入していて腰を抜かした記憶があります。そう思えば、昨今、ファンとの距離が近づいたからっていうことで問題の根源を見つけたように事を片付けるのはちょっと違う感じがします。現場の数が増えすぎて警備が手薄になってるなど、現実的な問題はあるとは思います」