つんく♂語る【後編】日本の未来は…子どもたちに充実したエンタメ教育を
未来背負う子どもたちに充実したエンタメ教育を
そこでつんく♂が強く思うのは、エンタメにおける教育の充実だ。日本の子どもたちが小さな頃からエンタメを学べる産業を作りたい、と目を輝かせる。
「この発想は、個人レベルで可能な予算規模じゃない。どなたかの支援がないと実現しないとは思っています。子どもたちがエンターテインメントの裏も表も体験できる施設。誰もが思いつくレコーディングやドラマや映画の撮影体験とかだけでなく、メイキャップやヘアデザイン、コスチューム作り。DJやユーチューバー体験、アニメやゲームソフトを作ったり、AIやロボットなどテクノロジーの世界を知るなど、いろんなエンタメを体験できる施設。キッザニアさんが職業体験であるならば、エンタメや芸術、文化に特化した特殊な体験施設」 施設の必要性を感じるとともに、日本人の優れた面がまだ十分生かされていないと語る。 「日本人の芸の細かさって世界でも類を見ないすごさがある。それはすでにエンタメなんですよね。それがまだまだ世界の皆さんに伝わっていない。それがもったいない。今後日本にカジノ特区ができるのならば、素敵なホテルが乱立するだけでなく、街そのもののエンタメ作り。今からそれを順序立てて作って行けば、10年足らずで、世界水準に並ぶアーティストが育ってくるんじゃないかなって思います」
長男「パパ、世の中で一番お金持ちの仕事は?」
「パパ、世の中で一番お金持ちの仕事ってなんなの?」と当時10歳の長男に聞かれたのが、教育について考え始めるきっかけになったとか。 「僕らが子どもの頃は芸能界ってチャンスをつかめば大金持ちになれるイメージがありましたね。矢沢永吉さんが長者番付に載った、すごいね!など、わかりやすい象徴がありました。しかし、最近は芸能界よりITの勝ち組のほうが目立ってます。もちろん世界にはもっとたくさんの種類の職業がありますよね。そんな子どもたちに世の中にはいろいろな職業があり、実際にこんなことをしている。こんな場面で役立っている。こんなすごい結果を残してきた企業であるというようなことをわかってもらえるような場所、機会があればなと。またそれらを体験したり、実際にその会社の人や創業者からの講演会や授業を受けられたり、その他いろいろなワークショップみたいなことができるような場所があれば連れてくのにって」 つんく♂の思いは、エンタメから社会全体へと広がっていく。 「どんな職業に携わりたいかで行くべき大学や専門学校も変わるし、部活も習い事も変わってきます。小さい頃から目に触れる警察官や消防士、スーパーや洋服の販売員、料理人のような職業はわかりやすいですが、IT関連会社や証券会社、商社って何? 銀行って何をやってるの? 弁護士って? 検事って? 政治家って? などなど、知らないことだらけだし、実際僕も大学に入ってから知ることが多すぎて、『これをもともと知ってたら違う学部に進学したのに』って思います」 また、長男には「パパ、インベスタ―って何? 証券取引って何?」とも聞かれたのだとか。 「感覚的にはわかるけど、正確に説明できないんです。株を買う、売るだけでなく、ゴールドマンサックスって会社は何をしているのかとか、最近ではネットでも株の売り買いが出来るけど、その理屈を10歳の息子に自分の知識だけで教えたら、そこで息子が抱くイメージが決まっちゃう。だからそういうことを正しく教えてくれるプロの講義があったら、息子に聞かせたい。銀行に預けたらなぜお金が増えるかを、プロに話をしてもらいたい。たぶん学校の先生でも正確に教えられないと思うんです」