長友佑都が「ブラジルは本気じゃなかった」と言ったハリルJの現在地
それまでポジティブな返答に終始していた長友佑都が表情を曇らせ、返答に窮した。 日本の現在地は測れたのか、という質問を受けたときのことだ。 「現在地ですか。うーん、難しいなあ、それ。だって、うーん、ブラジル、本気じゃなかったでしょ」 3点のリードで迎えた後半、ブラジルは明らかに流していた。セーフティリードのために無理をしなくなり、ゆっくりとボールを回して時間を使いながら揺さぶってきた。そこに前半のような鋭さは、なかった。 もっとも、長友がブラジルは本気ではないと感じたのは、後半だけではなかった。 「前半もフワッと入ってきましたからね。あれはワールドカップ、コンフェデもそうだし、(ブラジルの)ホームでやったブラジル戦の勢い、威圧感と全然違った。やれた部分もあって自信になった部分もあるんだけど、結局、彼らが100%ではないので、正直、なんとも言えないです」 その言葉の中に、日本の現在地が見えた。100%ではないブラジルを驚かせることができなかった、脅かすこともできなかった――それが、日本の現在地だった。 ハリルジャパンにとって世界の強豪との初めての対戦となったブラジルとの親善試合は、前半に3点を奪われたものの、反撃に出た後半にCKから槙野智章が1点を返し、一矢を報いた。 試合に大きな影響を及ぼしたのは、ビデオ・アシスタント・レフェリー(VAR)によって確認された10分のPKの判定だろう。 ブラジルのコーナーキックを日本がしのぎ、しばらくしたとき、レフェリーがゲームを止め、ピッチサイドで映像を確認。吉田麻也のプレーがファウルと判断され、PKの判定がくだった。実際に映像を見返すと、たしかに吉田がフェルナンジーニョを押し倒していた。このPKをネイマールが決め、ブラジルが先制する。 VARは6月に開催されたコンフェデレーションズカップで採用され、今シーズンのブンデスリーガとセリエAでも導入。来年のワールドカップでも導入が検討されている。吉田がプレーするプレミアリーグでは採用されていないため、吉田にとっては初体験だった。高い授業料を払うことになったが、吉田をはじめ、日本の選手たちにとってワールドカップに向けて貴重な経験になったと言える。 「こういう大事な試合で、インテンシティを高くして行こうとしている中で、ゲームを台無しにしてしまうようなミスだったと思います。本当にアホなことをしてしまったなと思います」 そう吉田が自身を責めたこのミスによって、見えなくなってしまったものがある。 日本はキックオフと同時に積極的にプレスを仕掛け、申し分のないスタートを切っていた。このまま0-0で後半を迎えることができたら、相手の隙を突いて仕留めることができたのか。0-0のまま進み、ブラジルが本気を出してきたとき、どこまで対応できたのか。それを見極められなくなったのは、痛恨だった。 一方、このミスによって見えたものもある。