アニメ制作市場、初の3000億円突破 過去最高を大幅更新 『すずめの戸締まり』など映画の相次ぐヒットが追い風
元請・グロス請:「黒字」割合、18年ぶりに5割超え 版権・興行収入が業績を支えた
制作態様別に平均売上高をみると、直接制作を受託・完成させる能力を持つ「元請・グロス請」では、2023年の平均売上高は23億6300万円で、前年(17億2200万円)を約6億4100万円上回って2年連続の増加となり、過去最高を大幅に更新した。業績動向では、「増収」が前年比9.1pt減の43.8%、「減収」は同5.3pt増の33.0%だった。損益面では、「増益」が51.7%となり、2005年(56.8%)以来18年ぶりに5割を超える高い水準だった。「減益」(24.1%)は前年から増加したものの、「赤字」(22.4%)は前年を大幅に下回り、4年ぶりの低水準となった。総じて、元請・グロス請では収益力が大幅に改善・強化された。 元請・グロス請では、テレビアニメを中心とした従来の制作収入に加えて、VODサービスを経由した過去作品のオンデマンド・ストリーミング配信、リバイバル、キャラクター等の二次利用による版権(IP)収入が安定的に寄与し、増収となったケースが多かった。特に、人気コンテンツや制作技術の高い元請制作では、VODサービス事業者向けに10数億円規模でコンテンツを独占制作・提供する高額受注も目立った。このほか、2023年は劇場版アニメでも記録的なヒットが相次いだことが追い風となった。特にIP保有を目指す中堅以上の元請制作会社では製作委員会に参加するケースが目立ち、ヒットにともない大幅な配収を計上した制作会社も目立った。 損益面では、アニメーターなどの自社雇用が進んだことで人件費が増加したほか、アニメ作品の供給増に伴い業界全体でアニメーターなどのマンパワー不足が続いていることで、制作外注費などが膨らむケースが多くみられた。ただ、近年は受注単価に上昇傾向がみられることに加え、IP収入の増加分がコスト増を吸収し、最終的に増益となった企業が多かった。 他方、慢性的なアニメーター不足を課題とする制作会社では、制作期間の長期化や、外注費がかさむことで制作コストが請負金額を上回り採算割れとなったケースが引き続き発生し、増収ながら赤字に陥る企業がみられた。また、自社IPを有さない小規模な元請制作では収入増の恩恵に乏しく、IP保有の有無による収益力の格差拡大が進行している。