苦境にあった氷河期世代が互いに罵り合う悲哀 団塊の世代のように束になって発言ができない
円安とそれに伴う輸入価格上昇に端を発したインフレ傾向に対し、メディアは基本的に批判的でした。物価上昇が生活を直撃している。為替が過度な円安のせいだ。これは日米の金利差から来ているから、日本も金利のある世界にしなければならない! 一刻も早く金融緩和を止めて、利上げをするべきだ! たしかに、原材料を海外から輸入する産業にとっては円安は不利になります。ドル建て(債権・債務の関係をドル金額で表示すること)で同じ値段で調達してきても、円に換算すると金額が大きくなってしまいますからね。
同じ理屈で、海外旅行もしづらくなるわけです。日本円での出費がかさんでしまいますから。その上、ウクライナ戦争など地政学的な要因による原油価格の上昇などに伴い、諸外国でもインフレが起こって現地通貨での値段も上がってしまっていますから、円安とのダブルパンチでますます厳しい状況です。 他方、日本からモノやサービスを輸出する産業にとっては円安は恩恵です。ドル建てで同じ値段で売っても、円に直すと為替差益が発生するわけですから。
円で同じだけの利益を取ればそれでよいと考えるならば、その分ドル建てで値引きできるわけで、価格交渉力が相当あることになります。いずれにせよ、日本を支える製造業にとってこれは慈雨ともいえる好機でしょう。 では、円高の時はどうだったのか? 約15年前の2010年前後は1ドル=90円台の超円高の時代でした。輸出企業は円高で利益の出ない国内生産を諦めました。円安とまったく真逆の世界ですから、いくら日本国内でコストを削って製造しても、ドル建てでは値上げしなくては円に直した時の利益が出ません。
ですから、多くの企業が日本国内で製造することを諦め、海外のコストの安い国、当時目を見張る勢いで成長し続けていた中国にこぞって製造拠点を移転しました。当然、国内で生産に携わっていた人々は職を失うか配置転換を余儀なくされました。 ■政策当局への批判材料にできる便利なもの この時メディアは、「産業の空洞化だ! 日本の製造業が危機に瀕する!」と批判していました。今と違うのは、この時実は非正規労働者も雇用を失って生活の危機に瀕していましたが、そこに関しては「年越し派遣村」報道に見られる通り、政府の福祉が足りないという批判に終始していました。