苦境にあった氷河期世代が互いに罵り合う悲哀 団塊の世代のように束になって発言ができない
今もそうです。この世代は1学年で100万人を優に超える人口を抱えているのにもかかわらず、親世代である団塊の世代のように塊となって発言力を高めることができません。いつまでも焦点の合わない歪んだレンズのように、常に光が拡散して同世代間で罵り合ってしまいます。 ■「勝ち組」のメンタリティが世代間にも軋轢を生む さらに、世代間にも軋轢を生む存在になりつつあります。これは特に、氷河期世代を正社員として生き抜いてきた、相対的には「勝ち組」に分類されるような人の一部に次のようなメンタリティが生まれていることに起因します。
「私でもできたのだ。君らもスキルを磨いて強く生きるのだ」「なぜこんなこともできない。私の時代ならとっくにクビになっていたぞ」「そんなことで弱音を吐いてどうする?」そんな気持ちで10歳、20歳下の世代に接すれば、それは指導ではなくパワハラですよと糾弾される時代です。 結果として、氷河期世代を生き抜いた人たちはそのスキルを評価されるよりも、昭和の体質を残す「老害」として扱われてしまうのです。もう少しマイルドですが、これは私の実体験でもあります。我々が潜り抜けてきたことを今行ってしまうと、それだけでアウト。なんとも切ない話ですが、これが現実ということなのでしょう。
ならばもはや、何も言わずに「自己責任論」で通り過ぎようという向きもあるかもしれません。本記事は人事管理を論ずるものではありませんので、そのあたりは専門の書籍に譲りますが、世代全体として個々人のミクロな努力がマクロ経済政策によっていかに脆く簡単に押し流されてしまうのかを事程左様に肌で実感した世代なのだろうと思います。 ■為替を政策批判の材料にしてきたマスコミ そして、就職氷河期世代に対する経済政策ですが、これもまた、大手マスコミのダブルスタンダードが如実にあらわれています。この原稿を書いている2024年5月初旬の時点で1ドル=160円に迫る水準になっていて、日本の通貨当局は4月末からの大型連休中に為替介入(為替相場に対して影響を与えるべく、通貨間の売買を実施すること)を行いました。