苦境にあった氷河期世代が互いに罵り合う悲哀 団塊の世代のように束になって発言ができない
伊藤議員の国民民主党のホームページに上げられている経歴を見ると、「名古屋市出身、金城学院大学文学部卒、テレビ大阪、資生堂、リクルート、金城学院大学文学部日本語日本文化学科非常勤講師」となっています。 新卒でテレビ大阪に入り、記者職や営業職などを経て転職したということですが、このことを捉えて「そうはいっても就職できた奴が偉そうに言うな」「結局恵まれていた人間だろう」といった声もチラホラ見かけました。
私も、就職氷河期世代の話をラジオで取り上げると決まって「君は新卒でニッポン放送に正社員として入社しているのだから勝ち組だ」「勝ち組の上から目線だ」といった批判を受けます。 また、大学時代の同級生や上下2~3年ぐらいの同世代と話していると、中にはバブル世代と同じように「自己責任論」を振りかざす向きにも出会います。この世代、正社員の座をつかんだ人たちは、こちらはこちらで苦労に苦労を重ねてきました。 圧倒的な買い手市場の中でなんとかつかんだ正社員の座。デフレで転職も容易ではない中、上にはバブル世代の大量入社組がいて先輩たちのように出世もできず、下も入ってこないためにいつまで経っても下働き。堪え難きを堪え、忍び難きを忍んで歩んできた会社員人生。誰も褒めてはくれないし、誰も私の気持ちをわかってはくれない。だが、私は私なりに頑張ってきたのだ。努力してきたのだ。その分報われてしかるべきだ。上手くいかなかったのは「自己責任」なのだ……。
前述の伊藤議員の演説に「オレ全部受かった」といった御仁がもし同世代であっても私はまったく驚きません。そんな方には相当な運が味方したに違いありませんが、そういった人に限って「運も実力のうち」と嘯いたり、心底自力だったと信じ切っていたりします。 ですが、あの時代、運かコネがなければ職にありつけない、令和の今からは信じられないような厳しさが世間に満ち満ちていました。そして、その境遇の絶望的なまでの差が、氷河期世代の団結を阻み続けてきました。