行動学のプロが野犬の預かりさんに。野犬もペットショップも変わらない「子犬のリスク」
行動学のプロが野犬を譲渡できるように
そんな坂上さんが今、頼りにしているのが、動物行動学を専門にしている高倉はるか先生である。 東京大学、および大学院で獣医学を学び、在学中にカリフォルニア大学デービス校付属動物病院にて行動治療学の研究をされた高倉はるか先生は、冒頭の佐伯潤教授が教える「帝京科学大学」で講師もしていた。 そんなはるか先生の連載の後編。 前編「動物行動学のプロが“野犬”の『預かりさん』に。里親に出すために必要な2つのこと」では、山口県周南市から2匹の野犬の子犬を預かることになったはるか先生が、なかなか人馴れしない子犬たちに手を焼いている様子をお伝えしている。 はるか先生も、実は野犬の子犬の面倒をみるのは初めて。 預かった2匹のうち、1匹は1週間ほどで撫でたり、抱っこできるようになったが、もう1匹は一切触らせない。寝ているところに近付いても、途中で気づいて逃げるという。 そんな「野犬らしい」警戒心を解くきっかけになったのは、少し前から預かっているもう一頭の保護犬、ビスコの存在だった。 後編も、はるか先生の言葉でお伝えする。
「白菜祭り」で犬たち大盛り上がり
ポテトとパンプキン、2匹の野犬の子犬が来る前から預かっていたのが、ラブラドール・レトリーバーのビスコです。 ビスコは人懐っこいのですが、ほかの犬に対してガウガウやってしまう。 たぶん、シェルターにいた時なのか、前の飼い主さんといた時なのか、過去に何か嫌なことがあったのだと思います。うちにきた最初の頃は、先住犬のオレオにもガウガウやっていましたが、相手によってはまったく平気なので、何があったのかはわかりません。 ただ、後からやってきた2匹の子犬にはとても優しいのです。2匹もビスコのことは大好きで、自分から近づき、くっついてお昼寝したりしています。 犬には、「社会的促進」という、群れで同じ行動を取ろうとする傾向があります。 人馴れしていなかったポテトがすぐに私に馴れたのは、自分が大好きなビスコやオレオと私の関係を見て、安心したのかもしれません。 一方のパンプキンは、なかなか撫でさせてくれません。それでも、「人と暮らすと楽しい」と感じてもらうため、家の中ではたくさん遊ばせて、楽しい体験を積ませます。 たとえば、昨夜は「白菜祭り」をやりました。 白菜の芯をちぎって、4頭の前に豆まきよろしく、投げてあげるのです。すると、みんな競い合って食べるので、たいしておいしくない白菜の芯で、大喜び。こういう時は、おいしいもの、ハイカロリーフードのおやつは使いません。 トレーニングに使うおやつも、私は普通のドライフードを一粒ずつあげています。 犬が喜ぶおやつはたくさんあっても、しょっちゅうあげていると、特別感がなくなってしまいます。それにハイカロリーのものは、後々の健康状態にも良くない。ごほうびに使うおやつは、できるだけ粗食をお勧めします。