「ギフテッドを美談だけでは語れない」看取り医がみた「天才三味線奏者」の暴力…そして、それを受け止める夫と、もう一人の男が暮らす「奇妙な生活」
『ギフテッド』を支える周囲の苦労とは
近年「ギフテッド」という言葉をよく耳にするようになった。学問や芸術、スポーツなど、特定の分野で優れた才能を持つ人を指す言葉だ。 【マンガ】「死ねばいいのに」モラハラ夫に悩む女性が我が子をネットに晒し始めた理由 私が訪問診療や看取りを行っているつくば市でも、地域の成り立ちが研究学園都市ということもあり、近年、天才たちの老後に触れる機会が増えてきた。そういった患者の多くは単に頭が良いというレベルでは収まらない、高度な思考力を持っている。一方で発達障害を持っていることも多く、天才を支える配偶者の苦労は計り知れないものがある。 以前、このコラムでも触れた『後期高齢者になった「天才研究者」が書斎にひきこもり、認知症テストを拒否…「変な死に方をされたら困る」と怯える74歳妻と、看取り医がみた「異常行動」』では、夫が天才研究者である一方で自閉症スペクトラムも併せ持っているため、カサンドラ症候群になってしまった妻の話を紹介している。 自閉症スペクトラム患者は相手の気持ちを理解したり、想像したりすることが困難であることが多い。そのため、身近で暮らす配偶者や家族は、相手から自分が望むだけの愛情や共感を相手から受けられない、自分の存在価値を否定されていると感じて悩みやすい。 この天才研究者の妻も、自閉症スペクトラム患者を持つ家族や配偶者が受ける心理的苦痛である「カサンドラ症候群」を発症し、不安や抑うつ、眩暈が偏頭痛などを訴えており、孤独感や怒りなどの負の感情が抑えられなくなっていた。 コラムのケースでは、結果的に人生の最期で妻の苦労が報われる出来事が起きており、私個人としてはこの夫婦をみて、天才の彼らの業績を讃える時、その隣にいる妻の姿も讃えなくてはならないと感じずにはいられなかった。 ただ、「ギフテッド」のある方が、社会に価値を見いだされ、人類の歴史に爪痕を残すような人生を送れることは非常に幸運なケースだと感じる。例え才能が開花したとしてもその能力を生かす場もなく、市井の人として生涯を終えることも多いからだ。 コミュニケーションの能力の乏しさや、他人の気持ちを理解できない特性から、周囲の人たちからの理解も得られないこともよくある。今回、紹介するケースもそんな天才のひとりである。 ※プライバシー保護のため、個人が特定できる情報の一部を変更しております。ご了承ください。
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