ミニ解説:近づけば十数秒で“死” 核のごみって?
原発を利用することでたまる一方のいわゆる「核のごみ」。この最終処分場の選定をめぐって、佐賀県玄海町の脇山伸太郎町長は、第1段階となる「文献調査」を受け入れる考えを表明した。そもそも「核のごみ」とは?「最終処分場」とは?(経済部・岩田明彦) Q:「核のごみ」とは? A:核のごみとは原子力発電所で出た使用済みの核燃料から、再利用可能なウランやプルトニウムを取り出したあとに出る、極めて放射線量が高い廃棄物のことです。 「高レベル放射性廃棄物」と呼ばれ、表面の放射線量は1時間あたり1500シーベルト。これは人が近づけば十数秒で死に至るほどの放射線量です。 日本が原発を始めて約60年。再処理されガラス固化体(1本約500キログラム)となった「核のごみ」はすでに約2,500本。まだプルトニウムなどを取り出していない再処理前の使用済み燃料が約1万9000トン(ガラス固化体で約2万6000本相当)存在しています。 Q:核のごみの「最終処分場」とは、どういうもの? A:「核のごみ」が人が近づいても問題ない程度の放射線量に自然減衰するには数万年かかるとされています。 ただ、人間がそれだけ長い期間管理を続けることが可能とは限らないため、そもそも人間の管理に委ねずに済むようにという考えで、国は「核のごみ」を地下300メートルより深いところに埋めて最終的に処分することを法律で決めています。 今回、佐賀県玄海町が受け入れた最終処分場選定プロセスの第1段階「文献調査」では、町内の活断層の有無や火山などを資料から2年程度かけて分析します。 文献調査に問題がなければ第2段階として実際にボーリングなどで地質を調べる「概要調査」(4年程度)。その後、第3段階として地下施設での試験などを行う「精密調査」(14年程度)と進むことができます。 ただ、文献調査は市町村首長の判断で受け入れ判断できますが、その後の調査に進む場合は都道府県知事の意見を聞き、意見に反しては先に進まないことになっています。 佐賀県知事、そして文献調査が先行する北海道知事は、原発が県内・道内に立地していることなどから「すでに相当に貢献している」などとして、最終処分場建設に反対の意見を表明しています。 Q:今後の課題とは? A:原発をめぐる問題は賛否が分かれますが、核のごみは我々一人ひとり、そして、企業、学校、病院、駅や空港などのインフラ、至る所で必要な電気をつくるために出てくるモノ。ですからその処分をどうするかは誰にとっても「関係ない」ものではありません。 原子力政策を担当する齋藤経済産業大臣は10日「玄海町での受け入れは最終処分の国家的課題について社会で議論を深めるための重要な一石を投じるもの」との見解を示し、遅々として進まない最終処分場の議論が全国で活性化することを期待していると話しました。そのために、必要な情報提供等にしっかり取り組むとしています。 国民一人ひとりがしっかり考えるためにも、政府には言葉通りの実行を求めたいと思います。