和歌山毒物カレー事件を多角的に検証したドキュメンタリー映画『マミー』本予告解禁
和歌山毒物カレー事件を多角的に検証したドキュメンタリー映画『マミー』より、本予告が解禁。また、ドキュメンタリー監督の大島新、『福田村事件』監督の森達也、漫画家の押見修造ら各界著名人からコメントが到着した。 【動画】関係者によるさまざまな証言が綴られていく 映画『マミー』本予告 和歌山毒物カレー事件発生から4半世紀。本作は最高裁判決に異議を唱え、「目撃証言」「科学鑑定」の反証を試み、「保険金詐欺事件との関係」を読み解いていく。さらに、眞須美の夫・林健治が自ら働いた保険金詐欺の実態をあけすけに語り、確定死刑囚の息子として生きてきた林浩次(仮名)が、なぜ母の無実を信じるようになったのか、その胸のうちを明かす。 二村真弘監督は、捜査や裁判、報道に関わった者たちを訪ね歩き、なんとか突破口を探ろうとする。だが、焦りと慢心から取材中に一線を越え…。 解禁された予告編には、眞須美の夫・林健治や、死刑囚の息子として生きてきた長男の浩次(仮名)らが登場。事件当時のニュース映像、林家の写真を交えながら、関係者によるさまざまな証言が綴られていく。 また、ドキュメンタリー監督の大島新に加え、映画『福田村事件』監督の森達也、漫画家の押見修造、ライターの武田砂鉄、仏「リベラシオン」紙/「ラジオ・フランス」特派員の西村カリン、ノンフィクション・ライターの角岡伸彦、ライターのISO、公認心理師の信田さよ子、ジャーナリストの丸山ゴンザレス、映画評論家の町山智浩からのコメントが到着した。 映画『マミー』は、8月3日よりシアター・イメージフォーラム(東京)、第七藝術劇場(大阪)ほかにて公開。 大島新、森達也、押見修造らのコメント全文は以下の通り。
<コメント全文>
■大島新(ドキュメンタリー監督) この映画はスクープだ。そして誤解を恐れず言えば、痛切なるエンタメ作品だ。「執行されてしまったら取り返しのつかないことになる」と思い、調べ始めた二村真弘監督の取材の深さはもちろん、撮影・構成・編集などの表現力も一級品。同業者として脱帽、と同時に嫉妬した。 ■押見修造(漫画家) 衝撃的な「映画」だ。事件の当事者の人々の、語る内容はもちろん、その語り口、声、身体は、こちらの安易な予断を悉く裏切っていく。家族の、親子の、夫婦の、人間の計り知れなさ。膨大な時間の中の絶望と、しかし、それに抗う力を感じた。 ■武田砂鉄(ライター) 多くの人が「その話はもうやめてくれ」と逃げる。なぜ、逃げるのか。なぜ、カメラの前で語らないのか。各人の後ろめたさが渦となり、問いかけてくる。 ■西村カリン(仏「リベラシオン」紙/「ラジオ・フランス」特派員) マスコミが誰かの逮捕の場面を撮影し報道すると、視聴者はこの人が犯人と確信してしまいます。警察と組んだマスコミが推定無罪の原則を無視することが冤罪の出発点です。死刑囚がわずかでも犯人ではない可能性があったら、再審開始すべきです。『マミー』という映画が多くの国民を考えさせ、より良い司法制度に繋がってほしい。 ■森達也(映画監督、作家) もしもあなたが、当時の報道をそのまま信じ込んでカレー鍋にヒ素を入れたのは林眞須美死刑囚に決まっていると思っているのなら、絶対にこの映画を観て衝撃を受けるべきだ。その後に考えてほしい。自分たちは何を間違えたのか。なぜ思い込んだのか。 ■角岡伸彦(ノンフィクション・ライター) あの人が殺(や)ってるしかない―。作中の市民の声は、多くの人々の考えであろう。事件を一から洗い直した徹底取材が、私たちの固定概念を覆(くつがえ)していく。誰がやったかではなく、やっていないのかを検証した超絶ドキュメンタリー。 ■ISO(ライター) あの頃9歳だった自分もまわりの大人も、報道陣に水を撒く林眞須美さんの姿だけを見て、彼女を“悪人”だと判断していた。報道陣が市井の人の私生活を土足で踏み荒らす異常さにも気付かずに。これは当時“魔女狩り”に加担したすべての人に向けられた反証。メディアが無責任にも放棄したその後の役割を、すべて背負わんとする覚悟と執念が全編に漲っていた。本年の最重要作。 ■信田さよ子(公認心理師) 不思議な映画だ。何重にも入れ子構造になったテーマが見る者を惑わせる。冤罪告発、息子と母の関係、不可思議な家族に加えて、監督自身が大きな存在としてせり出している。一度も画面に登場しない林眞須美が真の主役かもしれない。一筋縄ではいかない本作は、ドキュメンタリーのあり方を根底から問いかける問題作となるだろう。 ■丸山ゴンザレス(ジャーナリスト) 和歌山カレー事件には被害者、加害者、報道、警察、検察……多くの関係者がいる。それぞれの立場から見え方が異なる事件である。では、自分は当時どう見ていたのか。今はどうなのか。本作を鑑賞後に見方を修正する必要があるのか、どうなのか。自問自答と決断を迫る作品だ。 ■町山智浩(映画評論家) 林眞須美の保険金詐欺の「被害者」とされた夫が語る真実が衝撃。警察、検察、マスコミ、裁判官によるでっち上げ。こんなひどい話があるだろうか? ある。今の日本は他も全部、こんな状況だ。取材していた監督が怒りのあまり一線を越えてしまうほどに。