7700円でフリマ購入、3900万円で売却! 発見者アートディーラーの審美眼光る
今年初め、アメリカ・ニューヨーク州で行われた、家主が自宅の納屋とその周辺で開催するフリーマーケット「バーンセール」で、アートディーラーが1枚の絵を50ドル(7700円)で購入。これがカナダの著名な画家、エミリー・カーのものと判明し、11月20日にオークションにかけられたとCBCが報じた。 画家のエミリー・カーは1871年、カナダ・ブリティッシュコロンビア州ビクトリアに生まれ、地元とアラスカの風景、そして双方の先住民の文化に最も大きな影響を受けた。カーは1920年、カナダ国立美術館で開催された展覧会を機にフランクリン・カーマイケル、ローレン・ハリス、A.Y.ジャクソンらによる著名なグループ「グループ・オブ・セブン」と親交を深め、彼らは彼女を「(カナダの)現代美術の母」と評した。 バーンセールで見つかった作品は1912年に制作された油彩《マセットQ.C.I.》で、ブリティッシュ・コロンビア州の村、マセットにあった民家らしき建物と、先住民が制作したトーテムポール、グリズリーベアの彫刻が描かれている。同作は、ブリティッシュ・コロンビア州の先住民コミュニティの芸術的遺産を記録しようとするカーの試みの一環として描かれた。 その後、1930年代にビクトリア在住のカーの友人であるネル・コージャー夫妻に贈られたが、夫婦は大規模な不動産の仕事に従事するためニューヨーク州に移り住んだ。 同作を発見したのは、ニューヨーク州パチョーグのアートディーラー、アレン・トレビッツだ。彼はカーの作品については詳しくなかったが、バーンセールの売り場ですぐにこの絵が特別なものであることに気づいたという。その時の様子を彼はこう語った。 「《マセットQ.C.I.》は納屋にある他のものよりも際立って見えました。そして私は作品を柱から下ろした時に署名と日付、タイトルを見つけ、エミリー・カーの作品であることに気がつきました。 ですがその時点では、彼女がどれほど重要な画家で、この絵にどれほどの価値があるのかは分からなかったのです」 トレビッツはその後ヘッフェル・ファイン・アート・オークション・ハウスのデビッド・ヘッフェルに連絡を取り、過去に《マセットQ.C.I.》をコージャー夫妻がオークションに出品したことを突き止めた。そして11月20日に同社でオークションにかけられ、予想落札価格事前予想価格7万4000ドル~14万8000ドル(約1140万円~2300万円)を大きく上回る手数料込み25万ドル(約3900万円)で落札された。 買い手は「情熱的なアートコレクター」であり、オークションハウスの優良な顧客だという。ヘッフェル・ファイン・アート・オークション・ハウスの副社長でありオークショニアのロバート・ヘッフェルは、「長い間行方不明だった宝物です。エミリー・カーはカナダで最も重要な芸術家の1人です。この絵画は、彼女がフランスでの留学を終えてカナダに戻った1912年の作品で、本当に素晴らしい発見です。買い手も喜んでいるでしょう」と語った。