日銀・黒田総裁会合後の会見1月31日(全文1)景気は緩やかな回復基調
下振れリスクが多いということについて
読売新聞:読売新聞のエチゼンヤです。2点お伺いします。先ほどの展望レポートでも下振れリスクのほうが上振れ要因よりもということだと思うんですが、大きいということですが、この中でも特に、アメリカの現在、保護主義的な色合いを強めている政策がどのように下振れリスクにつながっていくのか、もう少し具体的に、どのように見ていらっしゃるかをご説明ください。もう1つは、そういった先行き不透明感が企業の今後のこちらのレポートにもありますけれども、春闘の賃上げ姿勢にも影響するかと思います。その辺りについてもどういうふうにご覧になっているかお聞かせください。 黒田:下振れリスクのほうが多いということは、展望レポートの最後にグラフが出ておりまして、各政策委員の経済見通し、物価見通しの中央値を示すと同時に、下振れリスクがあるかないかっていうこともマークで示しておりまして、確かに下振れリスクのほうが大きいというのは政策委員の見方であるということはそのとおりであります。 その下振れリスクの内容につきましては、リスクについてはいろいろなことが書いてございまして、米国経済の動向も1つですし、欧州経済の動向とか、新興国経済、資源国経済等々、重要ポリティカルな問題まで含めて、さまざまなリスクがありうるということは示されているとおりであります。 そのうち、米国の新政権の新しい経済政策につきましては、先ほど申し上げたように、まだ政権が発足して間もないわけでございますので、具体的な政策がまだはっきりしないということはあるわけでありますけれども、先ほど申し上げたとおり、基本的に減税やインフラ投資などの積極的な財政運営によって米国の経済成長率、あるいは物価上昇率が高まるという期待からすでに市場では長期金利が上がり、株価が堅調に推移しているということであります。 で、それがどのくらいの下方リスク、あるいは上方リスクになりうるかということについては、これはそれぞれ各委員がいろんな考えをお持ちだと思いますけれども、具体的に米国経済自体を、ファンダメンタルをよく見ますと、雇用・所得環境の着実な改善を背景として、家計支出を中心にしっかりした回復が続いてきておりますし、それから市場が見ているように積極的な財政政策の効果もあって、国内民需を中心にしっかりとした成長が続くという見方が市場の主要な見方だと思いますけども、そういった動向自体については委員の方々の多くの方も意見を共有しておられると思うんですけども、具体的にどの部分がどのくらい下方リスクになっているかっていうことは、それぞれの委員の方のご意見であろうというふうに思います。 それから春闘につきましては、展望レポートの中でも具体的に示されておりますけれども、従来から申し上げているように日本銀行は単に物価が上がればいいということではなくて、企業収益の増加、雇用の増加、賃金の上昇を伴いながら、いわば物価が緩やかに上がるという好循環を目指しているわけでして、この点ですね、この展望レポートの中でも示されておりますとおり、企業収益は過去最高に近い水準で推移しておりますし、今朝の雇用統計などを見ましても失業率は3%まで低下して、有効求人倍率がさらに上がり、タイトな状況が労働市場で続いております。 従いまして、ご指摘のような世界経済における下振れリスクっていうのはもちろんありうるとは思いますけれども、メインのシナリオは今回、2016年度、17年度、18年度と成長率が上振れしているという状況でありまして、先ほど申し上げたように企業収益、あるいは雇用情勢などを見ますと、ベースアップ、あるいはボーナスなどの形で賃金が上昇する環境は十分整っているのではないかというふうに思っております。はい、どうぞ。