日銀・黒田総裁会合後の会見1月31日(全文1)景気は緩やかな回復基調
トランプ大統領就任について
朝日新聞:2点目ですが、アメリカの新しい大統領にトランプ氏が就任したことに関連してお尋ねいたします。11月の当選決定以降、トランプ氏の経済政策への期待感などから市場ではトランプ相場と呼ばれるような、円安株高が続いてまいりました。このところ保護主義的な姿勢も目立って、市場の変化の兆しも見えておりますけれども、トランプ氏の大統領就任で、アメリカや世界経済、もしくは金融市場にどのような影響を与えるかについてお尋ねいたします。 黒田:新政権の下で、減税やインフラ投資などの積極的な財政運営によって、米国の経済成長率や物価上昇率が高まるという期待から、確かに米国の金融市場においては長期金利が上昇し、株価は史上最高値圏内で堅調に推移しております。現時点では、新政権の経済政策の具体的な内容は明らかになっていないわけですけれども、米国の政策運営は米国経済だけでなく世界経済や国際金融市場に大きな影響を及ぼすために、新政権の政策運営の方向性、あるいはその影響についてはよく注意して見ていきたいというふうに思っております。
現時点でマイナス金利政策の効果や影響などについて
朝日新聞:3点目です。マイナス金利政策の導入決定から1年を迎えました。その後、日銀の金融政策の枠組みも変わっておりますけれども、現時点でマイナス金利政策の効果や影響などについて、どのように総裁はお考えになっているのか、また反省点などがもしあれば教えていただきたいと思います。 黒田:ご案内のとおり日本銀行は昨年の1月の金融政策決定会合において、マイナス金利付き量的・質的金融緩和というものを導入しました。その後の金利動向を見ますと、国債金利はイールドカーブ全体にわたって大きく低下し、これが貸出金利、あるいは社債金利の低下にしっかりとつながったわけであります。 ただ、昨年の前半は世界経済の減速や、さまざまなリスクの顕在化の下で、ご案内のとおり国際金融市場が不安定化するなど、いわばわが国経済は逆風に見舞われたわけであります。こうした中で、マイナス金利の下での極めて緩和的な金融環境というものは、企業や家計の経済活動をサポートしたと考えております。この間、金融機関の貸出態度は引き続き積極的でありまして、金融仲介機能の悪化というような状況はうかがわれないわけですけれども、金融期間の利ざやは縮小しております。また、超長期金利などが過度に低下いたしますと、保険、年金などの運用に影響が出て、マインド面などを通じて経済活動に悪影響を及ぼす可能性があるということであります。 こうした点を念頭において、昨年9月には総括的な検証を行い、それまでの政策枠組みを強化する形で、長短金利操作付き量的・質的金融緩和を導入いたしました。現在の枠組みでは、経済・物価・金融情勢を踏まえて2%の物価安定の目標の実現のために最も適切と考えられるイールドカーブの形成を促していくということにしております。 その後、世界経済の成長のモメンタムが高まり、グローバルに長期金利が上昇する下でも、わが国の長期金利は操作目標である0%程度で安定的に推移しております。イールドカーブ・コントロールは世界経済がいわば追い風に変わる中でそれを増幅し、強力な緩和効果を発揮しているというふうにみております。このように、マイナス金利導入以降の金融政策運営は2%の物価安定の目標の実現に向けて、必要かつ適切な政策であるというふうに考えております。 読売新聞:総裁。 黒田:どうぞ。