73歳の癌サバイバーがベンチプレス大会で102.5kgを挙げ、東京都新記録を更新!「ベンチプレスは私の生きがいです」
8月10日(土)、聖書キリスト教会・東京教会にてパワーリフティング公式大会である『江古田X-TREMEベンチプレス選手権大会』が開催され、石渡敬一郎 (いしわた・けいいちろう / 73)さんが 男子59kgで優勝を果たした。 【写真】石渡敬一郎選手のベンチプレス
石渡さんは今大会の最年長出場者。73歳となった現在でも午前中は在宅リハビリの仕事をしながら、日々トレーニングに励んでいる。そんな石渡さんがベンチプレスと出会ったのは48歳の頃。それまでは40歳から始めたボディビル競技に打ち込んでいた。 「目標に向けて身体を仕上げ、作り込むボディビルにはとてもやりがいを感じていました。でもそれと同時に大幅な減量で身体への負担が大きかったのも事実で。試合後に採血をすると脱水や肝機能の数値が悪化していたんです。そんな時に出会ったのがベンチプレス。通っていたジムのチーフがパワーリフティング競技をやっていたため、誘ってくださいました。腰痛に悩まされていたため、負担の少ないベンチプレス競技を選択したのです」 それからも長年に渡りベンチプレス競技と向き合い続けてきた石渡さん。そんな中、2022年に思いもよらない事実が発覚する。 「十二指腸乳頭部の悪性腫瘍が見つかり、12時間の手術を経験しました。2019年に出場したベンチプレスの全国大会では74kg級に出場していたにも関わらず、今では59kg級になってしまいました。15kgも痩せると人が変わりますね。今でも月1回は採血とCTを撮影。抗がん剤治療薬も2週間に1回のペースで服用を続けています」 身体への負荷も大きい抗がん剤治療を行う今もなお、トレーニングを続け大会出場を果たしている石渡さんの原動力を伺った。 「正直、体力のコントロールは決して簡単ではありません。医師からも抗がん剤を飲みながらトレーニングができる人は見たことがないと言われました(笑)。味覚機能の低下や倦怠感、発熱など免疫が落ちるため何が起きてもおかしくはありません。そのため、マスクの着用は欠かせませんし、体調が優れない日はしっかりと休息を取ります。それでもトレーニングを続けるのは、病気に勝つという強い思いがあるから。ベンチプレスは私の生きがいなのです」 そんな石渡さんはベンチプレスをはじめて、体力以外にもプラスの効果を感じるようになったという。 「一つひとつの物事にこだわりを持つようになりました。また、何ごとにも計画的にコツコツと取り組むクセが付きましたね。仕事にもいい影響を与えてくれるのですよ。地道な努力は必ず実を結ぶということをベンチプレスを通して体現できたからこそ、継続的な努力は大切にしている価値観です」
ベンチプレスを心から愛し、前向きな気持ちで病気に打ち勝ってほしい。
文・撮影:池田光咲