AI人気で光差す139年の老舗電線企業、日本株上昇率1位はフジクラ
フィリップ証券の笹木和弘リサーチ部長は、データセンター分野について「これから非常に伸びる。大規模化し、データの流入量と送信量が増えてくる」と述べた。
フジクラは1885年に藤倉善八氏が絹・綿巻線のメーカーとして創業。電線からワイヤハーネス、光ファイバーと供給製品を拡大し、新幹線の信号ケーブルなども作っている。新型コロナウイルスの流行や米中の貿易摩擦に直面した20年3月期には16年ぶりの最終赤字に陥ったが、AIブームの恩恵でここ数年の利益は拡大傾向だ。
米国では現在、インフラ計画に使われる米国製以外の製品や資材は米政府の援助を受けられないことが「ビルド・アメリカ・バイ・アメリカ法(BABA、バイアメリカン規則)」で定められている。さらに、海外製品に対し高率関税をかける方針の共和党のトランプ氏が来年1月に米大統領に返り咲くため、米市場で一定の売り上げがあるフジクラにとっても対応を迫られている状況だ。
飯島CFOは、覚悟を決めて米現地法人で超多芯・高密度光ケーブルの製造拠点の立ち上げを完了したと説明。「米国で不利益、新たな課題が発生したとしても既に対応してきている」と語った。
東証33業種の年初来パフォーマンスを見ると、フジクラがけん引した非鉄金属が50%高で上昇率2位。しかし、株価高騰でフジクラの株価収益率(PER)は約28倍と、競合の住友電気工業の11.8倍、古河電気工業の20倍と比べ割高になっている。ブルームバーグのデータによると、カバーするアナリスト13人のうち、10人が買いと強気派は依然多いが、競合の方が魅力的と話す市場関係者も存在する。
オルタス・アドバイザーズの日本株式戦略責任者、アンドリュー・ジャクソン氏は「フジクラの大幅なアウトパフォーマンスを考慮すると、古河電工と住友電工にさらなる上昇余地がある」とみている。
AIブームが業績を押し上げるフジクラが次に狙うマーケットは核融合だ。同社は昨年、米国で世界初の核融合炉の実証に取り組むコモンウェルス・フュージョン・システムズに対し、レアアース系高温超電導線材の納入を開始し、将来的な同製品の生産能力拡大を目指している。飯島CFOは「2030年以降の柱になってくれればと考えている」と話した。
(c)2024 Bloomberg L.P.
Aya Wagatsuma