新型コロナ、麻疹、髄膜炎菌…パリ五輪で注意すべき感染症
◇麻疹は世界で流行拡大中
現在、麻疹の流行がアジアやアフリカを中心に拡大しています。この原因の1つには、コロナ対策に追われて子どもの麻疹ワクチン接種が停滞したことがあり、こうした国々からの輸入事例を発端にして、欧米や日本でも少数ですが患者が発生しています。麻疹ウイルスは空気感染するため、観客の中に患者が紛れていると、感染が容易に拡大します。過去にもスポーツの国際大会などで、麻疹患者が多発したケースが幾度となく報告されており、今回のパリ大会でもそのリスクは高まっています。 麻疹の予防にはワクチン接種がもっとも有効な方法ですが、大会の観戦者全員が接種を受ける必要はありません。接種をおすすめするのは、過去に感染していない人やワクチンを2回受けていない人で、日本であれば30~50歳代の人がこれに該当します。この年齢で大会を観戦する人は、事前に麻疹ワクチンの接種を検討しましょう。
◇高い致死率の髄膜炎菌感染症
最近、スポーツの国際大会などで注目されているのが髄膜炎菌感染症の流行です。この病原体は飛沫感染し、混みあった場所、とりわけ大声を出す環境で感染リスクが増します。患者は脳炎や菌血症など重篤な症状を起こし、致死率は1割にも及びます。日本でも、2015年に山口県で開催された世界スカウトジャンボリーで、外国人参加者の中に患者が4人発生しました。2019年には、ラグビーの第9回ワールドカップ大会で、観戦に来日したオーストラリア人が発病しています。 髄膜炎菌感染症は、イスラム教徒がサウジアラビアのメッカを巡礼する際に感染するケースが数多いことが知られています。今年はフランス、英国、米国で、巡礼後に発病した事例が多数報告されており、オリンピックの会場で感染が拡大することも懸念されています。 この感染症には有効なワクチンがあり、大会の参加者、特に大会スタッフなどに接種が推奨されています。前回の東京大会でも、300人以上の医療ボランティアに髄膜炎菌ワクチンの接種が行われました。