エンタメ王国・サウジアラビアがアツすぎる! 初開催の超巨大ゲームイベント「eスポーツ・ワールドカップ」を徹底現地ルポ!
これにより、中東産油国に新たな産業と雇用を創出して、国内の若年層に新たなキャリアパスを提供しようとしているわけです。 また、ゲームやアニメ会社、eスポーツチームなどを世界中から誘致し、観光地・エンタメの中心地として、国際的な存在感を高めたい、という思惑もあります。 一部メディアからはゲーム版「スポーツウオッシング」(特定の個人や団体、国家がスポーツを利用して自身のイメージ向上や問題の隠蔽を図ろうとすること)だと批判されることもあります。 ただ、これだけの大規模なイベントを実施・継続する力があることを内外に示しているのは、サウジが"開いた国"として文化的・社会的な変革を進める意思があるからとも考えられるでしょう。 一方でサウジは人材という面で課題を抱えています。例えば、今回のeスポーツW杯ではさまざまなゲームでサウジのチームが上位に食い込みましたが、その躍進は契約した外国人選手による貢献が大きいです。サウジのチームは潤沢な資金によって各国の強豪プレイヤーをスカウトしており、「経済力で勝利を重ねている」という声もあります。 もちろん有名なサウジ人選手もいますが、まだ多くありません。これはサウジ国内のサッカーチームが有名な外国人選手を高額な契約金で次々と獲得していった構造と似通っているといえます。 また、大規模なイベントを開催してはいますが、もちろんeスポーツに対してすべての国民が熱狂的になっているというわけではなく、世代間によっては温度差があるため、まだまだeスポーツとジャンルを国内に広め浸透させていく必要もあり、それをどれだけ継続させることができるのかという問題もあります。 eスポーツの市場が年々拡大をしている中で、サウジアラビアが国家戦略として今後どのような動きをとるのか、砂漠の国の中で光り輝く巨大なネオンの数々はいつまで輝き続けるのか、今後の展開も含めて楽しみです。 ●鷹鳥屋 明(たかとりや・あきら)1985年生まれ、大分県出身。日本企業に勤めるサラリーマンにして、中東コーディネーター。筑波大学卒業後、大手メーカーや商社、NGO職員などで働く間に外交イベント、ビジネスを通じてアラブ世界と深く関わりを持ち、日本と中東の橋渡し的な役割を担うようになる。SNSはアラブ人約10万人からフォローされている。生粋のオタクであり、日本のゲーム、アニメ、マンガといったコンテンツを中東に広げる活動にも積極的。著書に『私はアラブの王様たちとどのように付き合っているのか?』(星海社新書) 取材・文・写真/鷹鳥屋 明