うまいラーメンを作るだけでは「1000円の壁」は越えられない… 亀戸の若手店主がこだわる“味5割・伝え方5割”
■「おいしいからといって、お客さんはきてくれない」 とにかく量を試し、抽象度を上げていくことで少しずつ精度が高まっていった。ラーメンをリニューアルしたことで『TRYラーメン大賞』でも評価され、冬場からお客さんが増えてきた。そのまま春頃まで好調だったが、5月から一気にまた売上が落ちてしまう。 「お客さんは、ラーメンがおいしいからといって来てくれるわけではないことに気付きました。味以外の部分がよくないのではないかと、ラーメン以外の部分に目を向け始めました。“味5割・伝え方5割”で、おいしく食べていただくためには“伝え方”の部分も大事なのだと考えを改めました」(藤﨑さん) おぼんのセッティングや照明、BGMなど空間全体をブラッシュアップしていき、「伝え方」にも磨きをかけていった。マーケティングの要素を取り入れることで、より店全体のことを考えられるようになった。ラーメン業界では、1杯の価格が1000円を超えると心理的に「高い」と感じてしまう「1000円の壁」問題がよく議論になる。だが、藤﨑さんが目指すのは「1000円の壁」より上のレイヤーだ。うまいラーメンを作るだけでは、ここは乗り越えられないことを悟ったのである。 「“味”と“伝え方”の両方をちゃんとしていかないと、これからの店は続かないと思っています。繁盛しているお店はみんなここがちゃんとしているんです。三ツ星のレストランはシェフだけでなくサービスにも人を使います。自分たちの作っているものをちゃんと伝える方法を知っているんです。私も自分なりの最適解を探していこうと思います」(藤﨑さん) 飲食店は味だけではなく総合力が大事だと藤﨑さんは言う。単価をそれなりにいただいている以上、お客さんの期待度も高くなる。その上で、味以外の努力もしていかなければ、いいお客さんは離れてしまうのだ。藤﨑さんは、店を訪れるお客さんのレベルが高いと日々感じており、そこに店が追いつかねばという気持ちで毎日ラーメンを作っているという。