「デジタルの時代だからこそ、“感性”が重要」…「東京スポーツ」平鍋幸治社長が語る、「ネット時代に守りたい“東スポ文化”」とは
紙よりも早くネットに
日刊ゲンダイの「日刊ゲンダイDIGITAL」と同様に、東スポも「東スポWEB」を立ち上げ、アクセス数を増やそうと力を入れている。私が寄稿しているプロ野球の拙文も、紙よりも早くネットにアップされたり、時にはネットオリジナルとして扱われたりすることが増えた。しかし、売り上げはまだ紙のほうがウェブよりも上だ。それは日刊ゲンダイも東スポも変わらない。平鍋社長は両手で大きな円を描き、「これが紙の売り上げ」とすると、大きな円の何分の一かの小さな円を指で描いて、「ウェブの売り上げはこのくらい」と指摘した。 「それだけ紙の売り上げのほうが大きくても、利益率から言うと、ちょっとは黒字になったかな、いや、まだ赤字かな、というぐらいです。紙はやっぱり、紙代も輸送コストもかかる。その点、経費のかからないネットのほうが確実に利益が出ますから。でも、毎日のトップニュース、きょうのでかいニュースはこれだって、一目でわかるのは紙じゃないですか。ゲンダイさんの1面なら『石破降ろしが始まった』と書かれたりとか、ウチの1面なら野球や芸能ネタで大きな見出しを掲げたりとか。それが(大手プロバイダーの)スマホのアプリやポータルサイトだと、ニュースの大小にかかわらず、新聞で言う雑感記事やベタ記事みたいに横並びで出されてしまう。アレもどうなのかなあ」
「最後は感性」
ネットによる記事の均質化、それに伴ってインパクトが薄れることは私のようなライターにとっても頭の痛い問題である。私の東スポの連載コラム「赤ペン!!」から一例を挙げよう。今季DeNAが広島に負け越した際に書いた記事は、東スポWEBでは試合中の三浦大輔監督の写真が添えられたごく普通のレイアウトだった。ところが、紙のほうでは三浦監督の頭上に巨大な錦鯉がいて、三浦監督をパクパクと食べているコラージュ写真に変わっている。このように読者を惹きつけ、思わず吹き出してしまう見せ方は紙、それも東スポにしかできない。平鍋社長もうなずいて言う。 「やっぱり、大事なのはそういう感性ですよね。僕、きょうも会議で(社員の)みんなに言ったんですよ。『データや数字も大事だけど、取材するのも、記事を書くのも、紙面を作るのも、一番大事なのは感性だ』と。阪神の岡田(彰布)前監督も仰っていたように、『最後は感性』なんです。例えば、ごく基本的なことですけど、現場で取材対象者を捕まえて話を聞くことひとつ取っても、タイミングや質問の仕方を間違えたら、うぜえな、あっち行けって言われちゃうし、ピシャリとハマれば面白い話が聞ける。そういう感性を磨くにはどんどん現場に出て行かなきゃいけない。ネットの時代だからこそ、デジタル化されればされるほど、余計に人としての感性が重要になってくる。ウチに入ってくる若い人にも、その感性を身につけてほしいですね」
【関連記事】
- 【前編を読む】【「夕刊フジ」休刊で岐路に立つ夕刊紙】平鍋幸治社長が明かす、「東スポ」が「餃子」「唐揚げ」事業に進出した“本当の理由”
- 【関連記事】【「夕刊フジ」休刊で岐路に立つ夕刊紙】「日刊ゲンダイ」寺田俊治社長インタビュー「 “大新聞が書かない本当のこと”を書く。これが原点です」
- 【関連記事】「1年で潰れる」と言われて「日刊ゲンダイ」は50年…寺田俊治社長が激白 最大の売り“激烈な一面見出し”は「私が1人で付けています」
- 机を叩き、怒鳴りつけ、資料を奪おうと……東京新聞記者の異常な取材方法に厚労省が激怒
- 夕刊フジが来年1月で休刊か 「引き金はトラック運送費の値上げ?」ライバル紙が「むしろ大ピンチ」と戦々恐々するワケ