「デジタルの時代だからこそ、“感性”が重要」…「東京スポーツ」平鍋幸治社長が語る、「ネット時代に守りたい“東スポ文化”」とは
競馬の強化
平鍋社長がたとえに出した競馬こそ、本業の新聞で最も強化しようとしているコンテンツである。その一環として、今年4月5日、土、日曜に発行される紙面の内容を「競馬特別版」にリニューアルする大胆な紙面刷新を断行した。平日発行の通常紙面に掲載されているスポーツ、芸能などの記事はせいぜい3ページ。それ以外はすべて競馬面となり、馬柱と予想で埋め尽くされている。この話題になると、平鍋社長の声が一際熱を帯びた。 「紙を強化するなら、絶対競馬ですね。競馬、及び公営競技。絶対これ、ここしかない」 これに伴い、定価も180円から250円への値上げに踏み切った。 「週末版を値上げした当初は当然、いきなり250円は高いぞとか、賛否両論でした。それでも買うよと言ってくださる読者もいれば、お叱りを受けたりと、いろいろありましたけど、ここにきてやっと落ち着いて、徐々に認知されつつあるのかな、というところです。ウチは、プロレスもそうですけど、競馬もやっぱり、相当強いコンテンツだと自負してるんで、ここをもう徹底的に強化していく。全国にいる自社の所属記者の数も、間違いなく日本一じゃないかな。現場の記者、デスク、それに(競輪、競艇などの)公営競技も含めれば、50人ぐらいいますから」
世界一の馬柱
ネット時代、スマホ社会の今、競馬が紙の売り上げに役立つと平鍋社長が考えた根拠は何なのだろう。 「よく言われますよね、今の新聞はいずれなくなって、ウェブだけになるとか。いや、そうじゃないでしょう。僕がそう思うのは、競馬面の馬柱があるからこそです。あれは本当に世界一よくできてる。こんなに細かい馬柱が並んでいて、あの箱にいろんな情報が入ってる。世界中の新聞やメディアを探しても、あれほどの情報源になるものは日本だけですよ。だから、競馬場に行ってみると、20~30代のファンでも、やっぱり馬柱の紙を持ってる。そういう読者がまだまだ多い。なんでかって言うと、紙はエンピツやボールペンで書き込めるから。スマホでも出走表は見られますけど、書き込めないじゃないですか。スマホで見て頭に入れて、2-4買おうかなとか考えることはできますけど、それででっかいの当てたって話はあまり聞かない。やっぱり、紙は枠全体を見られるから、(出走馬の)並びだとか、その紙に自分で○や◎を書き込んで、おカネをかけて一喜一憂するわけでしょう。そういう文化はこの先も残ると思うんです。実際、大きなレースが行われる週末は、20代でも紙を買う人がいる。30代以上になると、紙の読者がもっと結構な数になる。40、50、60代は当然、紙がほとんど。そういう読者の年齢層からして、まだ20~30年ぐらい“週末の紙文化”は残るんじゃないかな。もちろん、スマホで予想する人も増えてはいます。全体の(読者の)パイが徐々に小さくなっていくのは避けられないでしょうけど」
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