「2か月誰にも会わず」稲川淳二(76)夏の風物詩・32年目を迎える怪談ツアーの創作は昼夜を問わず茨城の工房で黙々と
「自分で取材もするし、調べもします。そして、たったひとりで黙々と創作を続け、頭が覚醒されていくんです」と話す稲川淳二さん。恐ろしくて、優しく、どこか泣けて笑える、そんな人の心を打ち続ける怪談の創作秘話とは?(全4回中の1回) 【写真】「門外不出?」デザインセンスあふれる書体で書かれた稲川淳二さんの怪談ノート大公開 ほか(全16枚)
■「怪談はジェットコースター」怖いから楽しい ── 1993年から怪談ツアーを開始し、今年で32年目。昨年まで1009公演、延べ69万人を動員しました。人気の秘密は? 稲川さん:怪談のライブ感でしょうね。気軽にみんなで行ける感じがいいんですよ。ちょうどジェットコースターと同じで、走り始める前は他人同士、淡々とした雰囲気です。でも、みんなでスリルを経験して「キャーッ」と盛り上がって、カタカタとゴールまで戻ってくると、全員ゲラゲラ笑っていますよ。「おもしろかったね」なんて、言い合っているとお互い自然と親しくなります。怖くて楽しいものって、人をひきつけます。おもしろいだけの笑いってけっこう乾いていて、すごく笑うんだけど、サッとひいちゃうものなんです。怖くておもしろい話っていうのは後をひきますね。
── 公演はジェットコースター!お客さんはどんな方々が多いですか?年齢層に合わせて、話す内容を変えることはありますか? 稲川さん:客層は幅広いです。息子さんやお孫さんを連れてきてくれるおばあちゃん・おじいちゃんや家族で来る人、カップルやグループ、若い人だけ、さまざまです。高齢の方がお見えになるのは、嬉しいですねぇ。基本的に、誰もが理解しやすいようにあまり難しい言葉を使わないようにこころがけています。そして、私、ふだん少し早口なのですが、怪談のときはゆっくり話すようにしています。ただ、その会場の雰囲気によっても話すスピードは変えます。若い方が多いとテンポを上げますが、高齢の方が多いときはギアをあげすぎない。
── 毎年、ライブに参加される方も多いのでしょうか。 稲川さん:毎年、3世代で来る方もいますよ。印象的なのは、新潟で毎年、白い浴衣を着て、私のお面をつけてくる5人グループがいるんですよ。稲川ジュニア(笑)。若いのかと思ったら50~60代。いやぁ、嬉しいですね。みんな、いろんな服装で来て、公演が終わるとそれぞれ笑って満足しています。 最近は、外国人も増えていますよ。兄弟2人のアメリカ人が来て、なぜ日本語がわかるのか不思議で、たまたま楽屋に通したんです。そうしたら、ロサンゼルスのリトルトーキョー(日本人街)で、幼いころから日本人と遊んでいたから日本語がわかるんだって。それがまた、私のCDやDVDの話をよく覚えているんですよ。