「2か月誰にも会わず」稲川淳二(76)夏の風物詩・32年目を迎える怪談ツアーの創作は昼夜を問わず茨城の工房で黙々と
稲川さん:うん、けっこうありますよ。怪談を始めたのはたぶんそういうことでしょう。怖いところに行くと、汗かくんですけど、逆に嬉しかったりします。「やった」「これネタになる」と考える、第三者の自分がいるんです。だから、怖いんだけど行ってみよう、となります。 ── お話をとおして、怪談は意外と身近に存在しているという気になりました。 稲川さん:そうそう、そういう心霊スポットに行っても、昼と夜ではやはり違うんです。怪談というのは、日常から非日常に変わる状況で起きやすいんですよ。明かりがついているときはふつうだけど、ふっと消えた瞬間に状況が変わっていく、こういうところですよね。その瞬間に、風が吹いてきて…なんかあるね、ちょっと怖いねというあたりから、だんだんはまってきますからね。怪談は、すぐそこで起きること。自分が生活している社会の、日常の延長で、ある瞬間「何か変わったかな」と感じたら、だんだん状況が進んで、「変だな」「妙だな」と思うことが起きる。これが怪談のおもしろさです。
PROFILE 稲川淳二さん いながわ・じゅんじ。怪談家。1947年、東京都渋谷区生まれ。桑沢デザイン研究所を経て、工業デザイナーとして活動。1996年通商産業省選定グッドデザイン賞「車どめ」を受賞。その一方で、タレントとして、ワイドショー・バラエティー・ドラマと多くのメディアに出演。また、怪談界のレジェンドとして、若者からお年寄りまで広いファン層を持つ。“稲川淳二の怪談ナイト”の全国ツアーは、32年目を迎える。
取材・文/岡本聡子 写真提供/ユニJオフィース、オフ・ショア―、ジェイ・ツー
岡本聡子