【89歳の美容家・小林照子さんの人生、そして贈る言葉⑫・最終回】趣味を楽しむ「終活」を人生設計にプラス!
89歳にして美容研究家であり、ふたつの会社の経営者として現役で活躍する小林照子さんの人生を巡る「言葉」の連載「89歳の美容家・小林照子さんの人生、そして贈る言葉」。最終回、お話しいただいたのは、「人生の終い方」についてだ。 コーセー退社後、56歳で起業した小林照子さん。その後も、通常なら後半戦の人生をのんびり過ごす人が多いであろう、59歳、62歳、75歳、84歳という年齢で次々と事業を興していった。そして来年2025年には90歳を迎える。常に「10年先を考えて行動する」をモットーにしてきた照子さん。この先に考えていることとは?
「人生の終い方」は元気なうちに考えておく
1935年(昭和10年)に東京で生まれた照子さん。幼少期に両親が離婚し、戦中~戦後の子ども時代には合計5人の実・養父母に育てられた。 ※詳しくは第1回<コンプレックスは幼少期に受けた何気ない言葉から生まれる>、第2回<苦しいことに直面したときは「受け身」であれ>参照。 「思春期には舞台メイクの仕事に憧れ、美容学校からコーセー化粧品に入社。その後、初の女性取締役を経て退社したあと、同年に起業しました。56歳のときです。 それ以来、59歳、62歳、75歳、84歳で次々と新しいことにチャレンジしてきました。その私も来年で90歳です。 よく『若さの秘訣はなんですか?』と聞かれるのですが、私は自分の人生を振り返ってみると、長期の休暇を取ったことがないのです。ずっと働き続けてきました。常に歩みを止めなかったことが、もの忘れがひどくなったり、長期で床に伏せることなく、元気でやってこれた秘訣なのではないかと思うのです。 今までの私は常に10年先を見据えて、何をしたいか? 自分がどうありたいか? と計画を立てて実行してきました。75歳を過ぎた頃からは、今まで興してきた会社それぞれに、後を任せられる後継者を育ててきました。 2019年、84歳のときに開設した『アマテラス アカデミア(ATA)』という私塾では、2030年までに150人の女性リーダーを育てることを目標に掲げています。それも順調に進み、2022年には社団法人にしました。これが私の天命だと考え、次世代の女性リーダーの育成こそが世の中への最大の恩返しと思ったからです。 私は合計5人の実・養父母に育てられましたが、その5人と夫、そして2年前に実兄を看取りました。特に実兄の人生後半に、ともに高齢者施設を探したことをきっかけに、そろそろ私自身が入る『終の棲み家』について考えるようになりました」 現在は娘さんと二人暮らしだが、5~10年先を見据えて、先日、ご自身用の高齢者施設の契約をしてきたそう。 「現在は健康に問題はなく、介護はまったく必要ないのですが、将来的に子どもの世話にはならないと考えたのです。娘には相談なしで、勝手に契約してきてしまいました。事後承諾で話をしたら、娘は私の世話をする気満々だったようで、最初は少し驚いていましたが、納得してくれました。 介護の状態になったときのことや、亡くなったあとのことなど、家族でもなかなか話しにくいものです。しかし、自分の人生設計に『人生の終い方』を入れておくべきだと思います。 お墓のこともそうですね。私の場合は、夫が晩年精魂を込めて立派にした遠方の先祖代々の墓の墓終いをしました。それを見越して数年前に購入した都心のお墓の近くに改葬しました。そうしたことはその時が来るまで放っておきがちですが、体や頭が元気なうちにやっておきたいですね。 人は必ず老いていつかは死ぬのです。そこから目を背けないことです。これは7人を看取り、多くの友人・知人を見送ってきた私の経験からの思いです」