【89歳の美容家・小林照子さんの人生、そして贈る言葉⑫・最終回】趣味を楽しむ「終活」を人生設計にプラス!
残りの人生は子どもの頃にやりたかったことを楽しむ
施設探しは広告だけでなく、実際に足を運んで、自分の目で確かめることが大切だと照子さん。 「私も何十件も見て回りました。結構楽しいものですよ。 私はこれまでの人生で27回引っ越しをしてきました。28回目の今回がたぶん最後になると思うのですが、その終の棲み家は個人スペースがかなり充実し、自炊もでき、仕事に通うこともできます。それに入居者の共有スペースに食堂やカフェ、図書室などが備わっていて快適そうです。また、後々のための介護施設もあります。 老後がなかなか来ないと思う私ですが、その時を楽しめる準備は万端です。 そのうち、現在やっている仕事は徐々に減らしていき、今後は趣味を楽しみたいと思っています。75歳から始めた彫刻、80歳頃から始めた絵、そして86歳からピアノを始めました。 子どもの頃、近所に音楽大学があり、よくピアノの音が聞こえてきました。世界中の空港や駅でさりげなく一曲弾いて立ち去る人々を格好いい! と思う、私の夢がようやく実現するかもしれません。 そして、メイクアップアーティストや美容師の道具がそろっているので、私が入居したあとは、そこの高齢者施設の入居者の方たちに髪を結ったり、メイクアップをして差し上げたい。仕事ではなく、遊びの一環としてそんなことを考えています。道具の手入れや準備など、今のようにアシストしてくれる人はいないので、少し練習しておかないといけませんね(笑)」 2017年に設立した小林照子株式会社では、「美意識を持って生きる生き方」を提唱してきた。 「こうした小林照子イズムを伝承していく活動をするのが目的です。その一環として、2013年に立ち上げた小林照子奨学基金への援助に、私の著作物の印税などを充てています。 人は皆、命をまっとうしたら天に帰ります。あの世にはお金を持っては行けません。私は志を持つ子どもたちや若い世代に愛を注ぎ、サポートしていきたい。そのために自分のすべてのお金を使い切って、天に旅立つ予定です。そのことは娘にも承諾を得ています。 私は不思議に『死』を怖いと思ったことがありません。我が家には『ホトケコーナー』というのがあって、ひと足先に旅立った夫や愛猫たち、友人や仕事仲間の写真が飾られています。毎日、そこに手を合わせているのですが、向こうの世界ではきっと仲間たちが待ってくれていると信じているからです。 私は10年後には100歳になります。この頃には何にも執着せず、人の心を照らす光になっていたいですね。そんな自分の生き方を貫きたいと思っています」