【会見全文】(上)タカタのエアバッグ問題で高田会長が初めて会見
清水取締役がα事案とβ事案を説明
司会者:引き継ぎまして、品質保証本部本部長、清水取締役より詳細につきましてご説明申し上げます。 清水:品質保証本部本部長の清水でございます。それでは、エアバッグの市場措置の経緯、現状、原因分析の現状、当社製品の市場措置の拡大、現在の当社の取り組みについてご説明いたします。ではまず、エアバッグ市場措置の経緯、現状について説明いたします。 こちらは、いずれもエアバッグを横から見た断面図でございます。エアバッグには運転席側と助手席側、いずれにもインフレータという装置が組み込まれております。衝突時にこのインフレータからガスが発生し、バッグを瞬時に膨らませることにより乗員を保護するのがエアバッグの基本的な仕組みでございます。次に、右側の図でございます。こちらはいずれもインフレータの断面図で、上が運転席側、下が助手席側のインフレータでございます。この図を見るといずれにもガス発生剤が入っているのが分かります。これが燃焼することによってエアバッグを膨らませるガスが発生いたします。 タカタ製エアバッグに関する不具合は、このガス発生剤が何らかの理由により、以上な速度で燃焼し、インフレータの容器内に異常な量のガスが対流することで容器内の圧力が急激に上昇し、容器強度を超え、インフレータ容器が破損するというものです。その結果、まれにではありますが、破損した容器の破片がバッグから飛び出し、乗員を死傷させるという事態が生じております。 こうした不具合のうち、原因がすでに特定されている事案を、当社では「α(アルファ)事案」と呼んでおります。α事案により市場措置の対象となったエアバッグは納入個数ベースで合計で約950万個となります。α事案につきましては、不具合が確認されるとただちに解析に取り組み、原因をその都度明らかにしてまいりました。また、各自動車メーカーさまにおいて市場措置が実施されており、問題となるエアバッグは全てそれらの市場措置の対象に含まれております。当社はこれらの市場措置に全面的に協力しており、さらにこれらの問題に対してはすでに対策、再発防止策も実施しております。 なお、α事案に関する市場措置は、運転席側、助手席側の別などから、大きく5つのグループに分類でき、それらをこのスライドの灰色の部分、「経緯1」から「5」に示しております。個別の市場措置の届出を行った自動車メーカーさま、ならびにその対象製品、地域につきましてはご覧のとおりでございます。これらのα事案の原因は、ガス発生剤の成型工程における荷重不足や、部品の誤組付けといった製造時の工程管理上の問題でございます。ここまで示したように、α事案につきましては原因究明、再発防止の対応が完了しております。 一方で、まだ不具合の原因が特定できていない事案もございます。これを当社では「β(ベータ)事案」と呼んでおります。製造工程上の問題の有無も含め、その原因は引き続き検証中でございますが、回収品の試験結果や、ドイツのフラウンホーファー協会の協力により、不具合が発生するメカニズムについて理解が進みつつありますので、それについてはのちほどご説明いたします。 ご存じのとおり、現在実施されている市場措置は、この不具合の原因が特定されていないβ事案を対象としたものでございます。このスライド上、青色で示されている部分になります。ちょっと失礼します。スライドを次にめくっていただけますでしょうか。 これらの事案につきましては、2014年、6月以降、各自動車メーカーさまと協力の上、原因究明のため、市場措置が行われてきましたが、それに加えて本年5月18日、米国の関係当局である、NHTSAと当社米国子会社であります、TK Holdingsとの間で、米国おいて追加的な市場措置を実施することで合意に至っております。これについても、のちほど説明いたします。 それではここからβ事案の原因分析の現状についてご説明いたします。当社はβ事案の原因解析をドイツのフラウンホーファー協会に依頼しました。インフレータ容器の破損原因に関する同協会の解析はまだ継続中でございますが、現時点までに得られた同協会の分析内容を説明いたします。 まずインフレータ外に高温かつ多湿の環境下がありますと、その空気は絶対量として多量の水分を含んでおります。こうした環境下に長期間インフレータをさらしますと、インフレータ容器内に少しずつ水分が侵入する可能性が出てまいります。インフレータ容器内に入りこんだ水分は温度変化の影響も相まって、さらにガス発生剤内部に吸収される可能性が出てまいります。そしてガス発生剤内に水分が介在した状態で長期間が経過いたしますとガス発生剤内に気孔が生じ、表面積が増えるため、燃焼速度が上がる可能性があることが示唆されております。 なおこうした気候的条件のほか、エアバッグの車内への設置状況や製造上の精度のばらつきも、ガス発生剤の異常燃焼に影響すると考えられており、これらの要因が複合的に組み合わさって不具合が発生していると思われます。 つまり、β事案の不具合はインフレータが高温多湿の環境下に長期間さらされることに加え、製造上の精度のばらつき、インフレータの設置状態などの要因が複合的に重なり、インフレータ内に水分が侵入し、その水分をガス発生剤が吸湿した結果、発生した可能性が高いと推察されております。なお、回収されたインフレータから採取したガス発生剤を調査した結果、単純な経年による化学的劣化等は見られなかったとされております。またガス発生剤、またはインフレータの設計における全般的な不備はないとされております。