『ネコ全史』はなぜそんなに愛されたのか 訳者 矢能千秋さん
『ネコ全史 君たちはなぜそんなに愛されるのか』(日経ナショナル ジオグラフィック)が専門ムック本としては異例のヒットとなっている。SNS上では、本の表紙と共に撮ったわが家のネコの写真をアップする人が続出。数あるネコ関連書籍の中で、キャラクター本でもノウハウ本でもない『ネコ全史』は、どこにその魅力があるのか。翻訳者の矢能千秋さんに聞いた。 【関連画像】ポコ・ラモーンさん(@naoslap)さんのツイート 5月末に発売され、1週間で増刷になった『ネコ全史 君たちはなぜそんなに愛されるのか』。ペット関連本としては異例のヒットになっていますね。 ナショナル ジオグラフィックというブランドと、ネコというコンテンツが最強だったのだと思います。発売後すぐにアマゾンも楽天ブックスも品切れになったと聞いていますが、すぐに増刷になって、ネコが好きな人たちにこの本が届いてよかったです。 表紙と一緒に撮影した飼いネコの写真をSNSにアップされる方もたくさんいて。「このネコもかわいいけれど、うちのネコもかわいいでしょ」という気持ちですよね、きっと。当初はネコ好きな方々の反応が心配でしたが、アップされるネコちゃんの写真が愛くるしく、やっぱりネコは最強! という気持ちを新たにしました。 矢能千秋(やのう ちあき) 翻訳者。レッドランズ大学社会人類学部卒、英日・日英翻訳者。訳書に共訳『世界のミツバチ・ハナバチ百科図鑑』(ノア・ウィルソン=リッチ著、河出書房新社) 、『きみがまだ知らないティラノサウルス』、『きみがまだ知らないトリケラトプス』、『きみがまだ知らないステゴサウルス』(ベン・ギャロッド著、早川書房)ほか。 『ネコ全史』を翻訳者として読んだときの最初の印象はいかがでしたか? まず、イントロダクションが共感できる内容でした。 「ネコの愛は何となく与えられるものではない。人間が努力して勝ち取るものだ」とか、「家畜化されたのはネコの壮大な戦略」とか、「耳のとがった群れないイヌのような動物ではない。イヌを見る眼鏡で見るから、ネコが非社交的で知的に劣る動物に見えるのであって、ネコの行動にはネコなりの理由がある」と。きっと愛猫家の方の多くも共感されるのではないでしょうか。この思いがきちんと伝わるように訳さなきゃと思いました。 そして、ここを訳し始めたらあとはスルスルといきました。調べものなど大変ではあったのですが、原著の英文も易しい語り口で、科学的な見地からネコの歴史や生態を解き明かしていながら、専門書ほどは難しいものではありませんでした。もちろん、専門書だったら、生物を専攻したわけではない私に翻訳の依頼が来ることはなかったでしょう。