センバツ高校野球 健大高崎、逆転勝ち 県勢69年ぶり決勝 /群馬
第96回選抜高校野球大会(毎日新聞社、日本高野連主催)に2年連続7回目出場の健大高崎は大会第10日の30日、準決勝で星稜(石川)に5-4で逆転勝ちした。健大高崎の決勝進出は初めてで、県勢としては69年ぶり3度目。最終日の31日(午後0時半開始予定)に、県勢初のセンバツ優勝をかけて、前回大会準優勝の報徳学園(兵庫)と対戦する。【早川健人、来住哲司、小坂春乃】 【写真で見る歓喜の瞬間】歴代のセンバツ覇者たち 「初の決勝進出だ」--。生徒、保護者ら約450人の応援団は歓喜に包まれ、グラウンドで整列して校歌を歌いながら、うれし涙を流す選手もいた。 今大会4試合目で初めて先制を許す、厳しい展開に。三塁側アルプス席では、控えの野球部員約40人が味方を盛り上げようと声をからした。坂田一心さん(3年)は「日本一を目指している。選手たちを後押ししたい」。応援に駆け付けた津久井治男副知事は「勝ち抜いて、県民に勇気と希望を与えてほしい」と話した。 1点リードされて迎えた七回1死一塁、斎藤銀乃助(同)は「何も考えずに来た球を打とうと考えて打席に入ったら、甘い球が来た」と右中間に適時三塁打を放ち、同点に。2死後に高山裕次郎(同)の左翼線適時二塁打で勝ち越し、箱山遥人(はると)(同)も左前適時打で続いて5-3とした。 今大会初先発の石垣元気(2年)が七回まで4失点でしのぐと、前日に指を負傷した佐藤龍月(りゅうが)(同)は「平常心を心がけた」と、残り2回を無安打に抑えた。石垣は「悔しさが大きい。明日も投げると思うので『佐藤だけじゃない』と示したい」と好投を誓った。 主将の箱山は「決勝進出では満足していない。勝って泣きたい」と言い切った。 ◇ 県勢の決勝進出は第13回(1936年)の桐生中(当時)と第27回(55年)の桐生の2回で、いずれも準優勝だった。夏の全国高校野球選手権大会では99年に桐生第一が、2013年に前橋育英が優勝している。 ◇輝く雄姿逃さない ○…三塁側アルプス席では、健大高崎の写真部員5人が真剣な表情でカメラを構えた。青いひさしの白い帽子をかぶり、「健大高崎写真部」の白抜き文字の入った腕章を着用。新3年生の松本光瑛(こうえい)部長によると、撮影した写真は学校のホームページに掲載したり、写真展に出品したりするという。松本部長は「1試合で撮る写真は1人当たり約100枚で、5人いれば約500枚。実際に使うのは数十枚なので、試合後に写真を選ぶ作業にいつも相当時間を使う」と苦笑しつつも「作業は大変だが、勝ち続けて」と祈っていた。 ……………………………………………………………………………………………………… ■ズーム ◇「守りからリズム」体現 健大高崎・高山裕次郎二塁手(3年) 「今、セカンドがすごく楽しい」。昨秋は中堅を守ったが、首脳陣の「守備強化」の狙いから二塁を任された。今大会の4試合を通じて計20個のゴロをさばいて無失策。難しいバウンドでも、華麗なフットワークで危なげなく処理した。 準々決勝の山梨学院戦で二塁ゴロは10個。六回1死満塁のピンチでは、捕球後に自分で二塁ベースを踏んでから一塁に送球して併殺を完成させた。「しっかり捕って、守りからリズムを作りたい」と気負わずに話す。「甲子園はイレギュラーバウンドが少なくて、捕りやすい」とも。 父健一さん(52)はプロ野球の広島、西武でプレーし、今は広島のスカウトを務める。6歳上の兄、遼太郎さんも健大高崎で第89回大会(2017年)に出場した野球一家。母希(のぞみ)さん(51)は「子どもたちが泣いたり悔しがったりする姿も含めて、楽しませてもらっている」とアルプス席で温かく見守る。 3番打者を任され、今大会は15打数5安打で打率3割3分3厘。この日は七回に殊勲の勝ち越し二塁打も飛び出したが、「4割以上打ちたい」と、貪欲だ。【早川健人】