横浜の戦後闇市が起源の商店街・六角橋がおもしろい! 小商いできる賃貸長屋などを地域の拠点へ。江戸時代から続く地主が奔走
右手前の、かつての質屋の窓口がコーヒースタンドとして活用されている。
ロッカクパッチに入居するセレクトショップ、「KURAAK」は代官山に事務所をもつデザイン会社が運営しています。オーナーさんはデザイナーとして仕事をするなかで、友人知人らの手掛けたプロダクトを集めて広める店舗をもちたいと考えていたそう。募集サイトで入居募集を知り、内見したところ蔵にひと目惚れして開業を決意したのだとか。店名の「KURAAK」は、「蔵が開く」という意味で付けられています。この建物との出合いがなければ生まれていなかった、唯一無二のショップです。
店内全景。オーナーがセレクトしたさまざまな雑貨が陳列されている。
蔵を活用した展示スペース。期間限定での展示やポップアップなどに利用し、メインの店舗スペースとは使い分けている。
イッタラの食器と写真家の展示。蔵の空間に合う作品や商品の展示を行っている。
質屋の建物の特徴が活用されたデザインはほかにも見られます。 「建物中央のショーケースは1段目のみを残し、外部に開いたベンチに転用しました」 ロッカクパッチの中央部分は地域に開かれたコミュニティスペースとして生まれ変わりました。駅チカかつ隣接する商店街には小さなお店が多く、ひと息つくにも手段が限られてしまっていることから、誰でも自由に滞在して良いスペースをつくりました。商店街のまちづくりに関するイベントが開催されたり、近隣の神奈川大学の展示で使用されるなど、使われ方も広がりを見せています。
商店街のイベントの際にはロッカクパッチに入居するメンバー皆で協力して出し物をするなど、新しい結びつきも生まれています。
街に新たな人の流れを生み出す小商い
ロッカクパッチと同時並行で設計施工を進めていたのが、下北沢駅前の新拠点として話題となったBONUS TRACKなどを手掛ける建築家ユニット、ツバメアーキテクツに設計を依頼した「六角橋の四軒長屋」です。ロッカクパッチから徒歩10分ほどの位置にあり、小商いも可能な小規模な集合住宅として計画しました。 ここでも興作さんは、建物で行われる活動が周りに影響を与えるような土地利用を意識していました。 「ひとつの土地の運用を考えるのであれば、高層化して貸し出せる面積を最大化し、できるだけ短納期でコストを抑えることが利益の最大化につながります。しかし当家の場合は、街を長期的な視点で考えていく上で、六角橋に点在する地所を相互に結びながら活用していくことが重要だと考えています。街に人の流れが生まれて豊かになることで、エリア全体の魅力が上がっていく。そうすると保有している土地それぞれが生み出す利益の向上に寄与してくれる。新築でもリノベーションでも、いまある土地をより良い場所にしていくことを”土地を更新する”と呼んでいます。六角橋の地を少しずつ更新していってより良くしていきたい、という想いには、子どもやその先に生きる人たちのために良い街を遺してあげたいという想いも含まれています。先祖代々、地主として地域に関わり続けてきたからこそ、そのような愛着がもてるような気もしています」
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