横浜の戦後闇市が起源の商店街・六角橋がおもしろい! 小商いできる賃貸長屋などを地域の拠点へ。江戸時代から続く地主が奔走
四軒長屋は、1階が大きなガラス窓の開放的なスペース、2階が居住スペースの小さな住宅が4軒連結したつくりになっています。興作さんはツバメアーキテクツと、いくつかの土地の活用方針の全体ビジョンをつくりました。この長屋はビジョンづくりの議論を通じてまとまっていったものだそう。オープンな1階を小商いなどに活用してほしい、という意図で計画したところ、実際に1階を店舗に利用されている方もいらっしゃいます。
そのうち最も道路に近い1室に入居するのが、書店と図書室を併設した「電燈」です。2階に居住し1階を店舗として利用している電燈の店主は、このような店舗スペースを併設した住宅を探していてこちらの長屋を見つけたのだそう。本業は別にあるため、夜間や仕事がない週末にお店を開けています。
店舗奥には図書室と称し、閲覧用の書籍も配架。店主の本棚としても活用されている。左手に見える階段が居住スペースへの入口。
著者と直接やり取りをして仕入れることも多く、大手書店とは異なる個性的なラインナップ。
「以前は読んだ本の感想をインスタグラムに投稿しつつ、オンラインで書籍の販売をしていました。趣味が高じて始めた副業でしたが、店舗を構えたいなと考えていたときにこちらの物件を見つけて入居しました。自宅と別で店舗を借りようと思うと賃料が嵩んでしまいますが、ワンルームプラスアルファの金額でお店も開けるこの物件は、願ってもない好条件だったんです」 電燈への来客のほとんどは近隣の住人なのだそう。「近くを通る度に気になっていて覗いてみました、というお客さんが多く、建物のおかげなのかなと思うとありがたいです」という店主の言葉の通り、ズレながら連なる1階部分の隙間に店舗の活動が表出するようにデザインされています。 興作さんの声がけで四軒長屋の住人皆で食事会も開催。以来、住民同士で不在の際に植木の水やりをし合うなど、ゆるやかなつながりが生まれているそうです。 人口減少が進むにつれて人が住み続けるエリアも取捨選択が行われていくことでしょう。やまむろが手掛けている「人の動きを生み出す」建築は、そのような状況に対する先行投資の意味をもつと興作さんはいいます。 「ロッカクパッチや四軒長屋は建物を使う人の『やってみたい』を受け入れ、膨らませていくような建築です。その分管理する立場としては個別の対応をする手間も出てきますが、それによって入居者の方との関係が生まれたり、街との関わりが増える楽しさもあります。六角橋に住む人、プロジェクトに関わる人たちと良い関係を結びながら、地主として建物よりも長いタイムスケールで街を考え、より良い六角橋を次の世代に受け渡すことができたらいいなと思っています」 昔ながらの商店街が残る街に新たな拠点が生まれている六角橋。その歴史や文化を体感しに訪れてみてください。 ●取材協力 有限会社やまむろ 六角橋プロジェクト ツバメアーキテクツ 電燈
ロンロボナペティ
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