存在感高める露中、相次ぐテロ……世界を揺るがせた2015年10大ニュース
《第9位》COP21(気候変動枠組条約第21回締約国会議)での歴史的合意
12月12日、フランスで開かれていたCOP21で、地球温暖化対策に関する合意「パリ協定」が成立しました。パリ協定は1995年に採択された京都議定書を引き継ぐものです。 京都議定書では温室効果ガスの排出削減が、その「歴史的な責任」から先進国にのみ義務づけられ、これに不満を抱いた米国が離脱したため、実効性が薄いものになりました。これに対して、パリ協定は196の国・地域が地球温暖化対策に取り組む初めての国際的な枠組みで、その観点から歴史的な意味があります。 この背景には、世界全体の温室効果ガスの排出量の約半数を、新興国を含む開発途上国が占めるに至った状況で、開発途上国も応分の負担を避けられなくなったことがありました。
《第10位》イラン核合意の成立
7月4日、イランと米英仏独露中の関係6ヵ国は、イランの核開発に関する「最終合意」を発表。これによって、イランはウラン濃縮を一定のレベル以下で維持するなどの義務を負う一方、米国などはイランに対する制裁を緩和・廃止することになります。 2011年以降、「原子力の平和利用」を掲げるイランの核開発が、軍事目的のレベルに達しているという疑惑のもと、米国はイランへの大規模な経済制裁を主導してきました。今回の最終合意は、中東における不安定要素を一つ取り除いただけでなく、1979年のイスラム革命後、対立が続いてきた米国とイランの関係改善にも期待をもたせるものです。ただし、イランを敵視し、米国と近いイスラエルやサウジアラビアは、この最終合意を過剰な譲歩とみており、これらとの間で米国は難しいバランスを迫られています。
(次点)慰安婦問題をめぐる日韓合意
12月28日、日韓外相会談で、第二次世界大戦中の慰安婦問題に関する「最終的かつ不可逆な解決」に至りました。 日本政府は「心からのおわびと反省」を表明し、韓国政府が設立する元慰安婦支援のための財団に約10億円を拠出することを確約。一方、韓国政府はこの問題で日本を国際的に非難することを控えるとともに、ソウルの日本大使館前に市民団体が設置した、慰安婦を象徴する少女像を撤去する方向で努力することを確認しました。 竹島問題とともに、慰安婦問題は日韓対立の象徴でもありました。日本との対立が深まるなか、韓国は中国に接近。中国や北朝鮮を念頭に、日韓それぞれの同盟国である米国も懸念を深めていました。今回の最終妥結は、大戦の清算であると同時に、今後の北東アジアのバランスにも影響するとみられます。
------------------------------------------------------ ■六辻彰二(むつじ・しょうじ) 国際政治学者。博士(国際関係)。アフリカをメインフィールドに、幅広く国際政治を分析。横浜市立大学、明治学院大学、拓殖大学、東京女子大学などで教鞭をとる。著書に『世界の独裁者』(幻冬社)、『21世紀の中東・アフリカ世界』(芦書房)、『対立からわかる! 最新世界情勢』(成美堂出版)。その他、論文多数。Yahoo! ニュース個人オーサー。個人ウェブサイト