存在感高める露中、相次ぐテロ……世界を揺るがせた2015年10大ニュース
《第6位》ギリシャ国民投票と第3次金融支援
7月6日、ギリシャでEUやIMFが求める緊縮策の受け入れの是非をめぐる国民投票が実施され、チプラス首相が主張していた「受け入れ反対」が過半数の支持を集めました。これは、2009年に財政危機が発覚して以来、歳出削減や税収引き上げなどの条件のもとにEUやIMFが行ってきた融資への反動でした。 ところが、その後チプラス首相はEUが求めていた内容をほとんど受け入れた改革案を提示し、これを受けてギリシャに対する第3次金融支援が始まりました。チプラス首相は交渉を少しでも有利にするために、財政破たんを招きかねない「受け入れ反対」の意思をあえて国民投票で表面化させたとみられますが、このような状況は海外からギリシャだけでなく、事態をなかなか改善できないEUへの不信感をも招きました 。ギリシャ危機は西欧全体の混乱を印象づけました。
《第7位》シリア難民のEU流入の増加
9月、難民の少年が水死したニュースをきっかけに、世界全体、とりわけEUでシリア難民に対する関心が高まりました。 UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)によると、2015年12月までに約439万人の難民がシリアから流出しており、このうちEU圏内で保護を申請したのは約80万人にのぼります。 この事態は、難民の受け入れをめぐって各国内部の摩擦を大きくした一方で、EU諸国にシリア内戦を終結させる必要性を強く意識させました。その結果、例えばフランスは9月27日から、それまで控えていたシリア空爆に参加しています。 しかし、シリア難民の急増は有志連合によるシリア対策に限界があったことを象徴しただけでなく、難民に紛れて過激派がヨーロッパに流入する事態も招くなど、新たな緊張をもたらすことにもなりました。
《第8位》TPP(環太平洋パートナーシップ協定)交渉の大筋合意
10月5日、日本を含む12ヵ国がTPP交渉で大筋合意に達しました。これによって世界のGDP(国内総生産)の約40パーセントを占める巨大な市場圏が生まれることになりました。 TPPは二国間でのFTA(自由貿易協定)を拡大させたもので、メガFTAとも呼ばれます。TPPによって農産物を含む広範な商品の関税が撤廃されるだけでなく、金融などサービス分野も高度に自由化され、さらに通関手続きの簡素化など幅広い分野で共通のルールづくりも進むことになります。 米国はTPPの一方で、EUとの間でTTIP(環大西洋貿易投資パートナーシップ)の交渉を進めています。この二つのメガFTAには、中国やロシアなどを排して貿易ルールを策定することにより、米国主導の秩序を維持する一手という側面があるといえます。