存在感高める露中、相次ぐテロ……世界を揺るがせた2015年10大ニュース
2015年は例年以上に世界各地で大事件が相次いだ一年でした。冷戦終結後に確立された米国中心の秩序がますます流動化する一方、この流れを押しとどめようとするエネルギーも大きくなった年だったといえます。「グローバルな力関係の変化」の観点から、2015年の10大国際ニュースをランキング形式で取り上げ、来年以降を展望する手がかりにしたいと思います。(国際政治学者・六辻彰二) 【写真】「独立」「編入」「拡散」…… 世界を揺るがせた2014年重大ニュース
《第1位》ロシアによるシリア空爆
9月30日、ロシア軍がシリアで、過激派組織「イスラム国」(IS)を対象とする空爆を開始しました。シリアをめぐっては各国が自らに近い勢力を支援してきており、ロシアの直接介入は、中東全体における力関係に大きく影響する ものです。 欧米諸国やサウジアラビア、トルコなどは、もともと敵対するアサド大統領の退陣こそが、2011年3月から続くシリア内戦の終結につながると主張してきました。一方、もともとシリア政府と友好的なロシアやイランはアサド政権を擁護してきました。 ISが台頭した後、2014年9月からは、米国を中心とする有志連合がシリアで空爆を行い、米軍はシリアの反体制派に訓練などを実施。しかし、これらに目立った成果がなかったことが、ロシアに本格的な介入を許すことにつながったといえます。 米国政府の発表によると、有志連合とは別行動のロシア軍は、ISだけでなくアサド政権と対立する世俗派の反体制派をも攻撃対象にしています。つまり、ロシア軍は「IS対策」を大義名分に、シリア政府と対立する勢力を一掃し、アサド政権を延命させる既成事実を作ろうとしているとみられるのです。 11月からはフランスの仲介でロシアと有志連合の連携が模索されていますが、そのこと自体、ロシアの存在感を欧米諸国が認めざるを得ないことを象徴するといえるでしょう。
《第2位》AIIB(アジアインフラ投資銀行)の設立
12月25日、中国が主導するAIIBが正式に発足しました。57の参加国のなかには、英国、フランス、ドイツなど主なEU加盟国も含まれます。 AIIBはアジア各国の政府に対して、インフラ整備のための融資を提供することを主な業務とします。その設立は、グローバル金融の分野における中国の存在感を象徴します。 第二次世界大戦後、米国は自らが最大の出資国であるIMF(国際通貨基金)や世界銀行といった国際金融機関の融資を通じて、世界の経済に大きな影響力をもってきました。そのアジア版であるADB(アジア開発銀行)は、米国の同盟国である日本が最大の出資国として影響力を保ってきました。しかし、西側先進国の影響力が強いこれらの機関は、融資の際に相手国の人権状況や経済政策などに注文をつけることが珍しくないため、開発途上国の間では必ずしも好意的に受け止められてきませんでした。 融資において条件をほとんどつけないAIIBの設立は、これらと異なる代替案を中国が提示したものであると同時に、加速する中国の台頭を象徴するといえます。