【#佐藤優のシン世界地図探索85】北朝鮮軍の「ウクライナ参戦」から変わる世界ゲームのルール
ウクライナ戦争勃発から世界の構図は激変し、真新しい『シン世界地図』が日々、作り変えられている。この連載「#佐藤優のシン世界地図探索」ではその世界地図を、作家で元外務省主任分析官、同志社大学客員教授の佐藤優氏が、オシント(OSINT Open Source INTelligence:オープンソースインテリジェンス、公開されている情報)を駆使して探索していく! * * * ――前回のイスラエルとイランの手打ちから学ぶ教訓で、「人の力を借りて戦争をしてはいけない」ということですが、これはウクライナへの警告でもあるのでしょうか。 佐藤 ウクライナにも繋がります。戦争は自力でやらないとなりません。結局、大国は自国の国益のために、自分の思惑で戦争を決めますから。 裏返して言うと、ウクライナが「戦争を止めたい」と言っても、米国が「戦え」と言っている限り戦わざるを得ないわけですよ。 ――そうですね。 佐藤 逆にウクライナが「戦わせてくれ」と言っても、米国が「お前ら、もう止めろ」と言えば止めざるを得ません。人の力を借りる戦争だと、そういうことになります。 ――ということは、ウクライナは自国のために始めた戦争が、実は大国の国益によって行方が左右されるということを学び始めている? 佐藤 客観的にはそういうことですが、ウクライナはわかっていないようです。 ――そのウクライナ戦争では、北朝鮮軍一個師団がクルスクに来ます。佐藤さんは「クルスクにはウクライナが雇った傭兵が来ている。ならば、我々も北朝鮮という傭兵を使って駆逐する」と説明しています。一発で納得しました。 佐藤 そうです。それだけの論理なので、不思議なことは何もありません。 ――プーチンの決めた枠通りにやっているから、全く問題がないと。 佐藤 その通りです。 ――一方、ロシア軍は対テロ作戦を着実に遂行しています。ウクライナ軍(以下、ウ軍)のドローンパイロット9人を捕縛。パンツ一枚の姿で地面に寝かせて、そのまま射殺。テロの犯人として処刑しています。これは対テロ戦として合っていると。 佐藤 対テロ戦となると、そうなりますよね。 ――北朝鮮軍は「処刑係」として雇われているんですか? 佐藤 というよりも、「やっぱり実戦に出たい」と北朝鮮側が言っているんだと思います。北朝鮮軍はほとんど実戦を経験してないですから。 ――怖いです。