存在感高める露中、相次ぐテロ……世界を揺るがせた2015年10大ニュース
《第3位》先進国におけるイスラム過激派の活動の活発化
今年は先進国でのイスラム過激派の活動が、これまでより一層目立った一年でした。なかでも、その主な標的となったのはフランスでした。 1月7日、新聞社シャルリ・エブドが襲撃され、編集者ら12名が殺害されました。犯行声明を出したAQAP(アラビア半島のアルカイダ)は、同紙がムハンマドの風刺画を再三掲載していたことを理由にあげました。 その約10か月後の11月13日、やはりパリで同時多発テロ事件が発生し、129名が無差別に殺害されました。この際、犯行声明を出したISは、フランス軍によるシリア空爆を主な理由にしました。 フランスは、ムスリム女性が顔を隠すブルカの着用を公共の場で規制するなど、イスラム圏から「ムスリムに厳しい」とみなされがちな国です。そこで大きなテロ事件を起こすことは、それぞれの過激派組織にとって、支持者予備軍にアピールする絶好の宣伝材料でもあります。フランスで相次いだ事件は、テロの脅威のさらなる拡散を予見させるものでした。
《第4位》ウクライナ危機でミンスク停戦合意(ミンスクII)
2月11日、ドイツ、フランスの仲介のもと、ウクライナとロシアの間で、ウクライナ東部における和平のための合意(ミンスクII)が成立しました。 2014年3月のクリミアの独立宣言とロシア編入の後、ドネツクなどでは親欧米派の政府と親ロシア派の民兵の戦闘が激化。これを受けてミンスクIIでは、全面停戦や緩衝地帯の設置をはじめとする13項目が合意されたのです。 ただし、その合意内容は、現状の国境を維持しながら、高度な自治権をドネツクなどに与えるというロシアの主張に概ね沿ったものでした。これによりウクライナのEU加盟と、それによってロシアが「西欧」と隣接する可能性はほぼなくなりました。ミンスクIIは「戦後ヨーロッパ最大の危機」の分岐点であると同時に、この問題をめぐるロシア優位を際立たせるものになったのです。
《第5位》南シナ海での米中対立
10月27日、南シナ海にある南沙(スプラトリー)諸島のなかのスビ礁の近海で、米海軍のイージス艦が哨戒活動を行いました。中国は南沙諸島の領有をめぐりフィリピンやベトナムと対立しており、このうち7つの岩礁で埋め立て工事を行い、これらの人工島から12カイリの海域を「領海」と位置付けています。 米軍が哨戒活動を行った海域は、ここにあたります。米軍の行動は、この海域が「航行の自由」が保障される国際水域であることを強調するためのものでした。 ユーラシア大陸を横断する経済圏「一路一帯」構想を掲げる中国は、東シナ海からインド洋に至る海上ルートを確保するために海洋進出を加速させています。南シナ海をめぐる対立は、中国と既存の秩序の間の摩擦を象徴しました。